12月9日,佐賀の渡辺えり子講演会に参加した.「講演」となっているが,演壇もなく舞台に渡辺さんが一人立って語り続ける,一人語りといった方がいいだろう.前日の,東京・なかのZERO 西館小ホールでの「非戦を選ぶ演劇人の会」によるピースリーディングの熱気を佐賀に運んでくれた.

 1時間余り,自分が非戦の運動を始めることになったきっかけが,第一次湾岸戦争を止められなかった口惜しさにあったことなどの話から始まって,前日のピースリーディングの台本を作る過程で調べた,日本の戦時中の様子が紹介された.特に印象に残った,というより驚いたのは,1941年12月8日の真珠湾攻撃に際しての作家たちの発言である.太宰治や伊藤整ほか名だたる作家たちの,日記などからの本音の発言が紹介されたが,どれもこれもこの日米開戦に喝采を送っているのである.

 太平洋戦争をめぐっては,戦時中の国内のことは,原爆や空襲などはよく知られ,メディアや本でも取り上げられているが,それに比べ思想状況や当時の知識人の発言などはあまり取りざたされないし,知られていない,そのようなことを渡辺さんは言っていたが,まさにそうだと思う.第二の「戦前」になるかも知れない今のこの時代に,当時の思想経験を生かすことはとても重要だと思う.

 聴衆のあくびに反応したり,おそらくトイレと思うが,席を立つ人に語りかけたり(当人は気付かず「無視」された形),はては聴衆の年齢構成に注文をつけたりと,なかなかインタラクティブなパフォーマンスだった.途中「質疑応答」も2回ほどやった.渡辺さんと言えばほとんどの人が「Shall we ダンス?」のパワフルなオバサンダンサーの豊子を思い浮かべるだろうが,全くあのとおりのキャラクターで,あのパワーが舞台で炸裂したという感じだ.(続く,多分)