「テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス: 13局男女30人の聞き取り調査から」という本の紹介の3回目です.結論部分の終章「本調査から見えてきた日本のテレビ・ジャーナリズムの課題」から.メディア問題の重要なエッセンスが込められていると思います.
ふだんインタビューする側の人たちにインタビューした研究の成果がまとめられたものです.
前回まではこちら:1回目2回目
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223〜226ページ

2 テレビ報道職はジャーナリストではないのか
インタビューした限りでは、日本のテレビ報道職の人たち、特に男性のほとんどが、自分をジャーナリストとは思っていないと、答えている。では、「ジャーナリスト」とはどんな人なのか。彼らがイメージするのは、2章(1)ならびに(2)で説明されているように、「戦場ジャーナリスト」であり、その身分は「フリーランサー」であるようだ。テレビ報道職は、自分たちを「会社の名前を真ん中に書いた名刺をもって仕事をする」「組織をバックにもって仕事をしているからジャーナリストではない」という。その一方で、自分はジャーナリストではないが、自分たちのしていることはジャーナリズムであるという人もいた。

ジャーナリズムについての明確な定義や理念のないところが、ジャーナリスト教育なしでOJTに頼ったことの一つの結果とも考えられる。入社後もジャーナリズムについて系統的に学んでいないので、仕事上守るべきコンブライアンスにより目の前の仕事を遂行しても、一歩踏み込んで、言論・表現の自由や人権問題について、積極的に勝ち取る精神と方法論を学ぶ機会がなかったのではないか。