2017/7/12追記:最近フェイスブックでこの記事に触れたので,重要な情報を末尾に追記しました.ECRR 2010年勧告は致死ガンのリスクをICRPの2倍とするだけでなく,心臓疾患のリスクも評価しています.
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低線量被ばくにおけるガンのリスク(ガン死亡)を見積もるエクセルの表を作りました.線量率(マイクロシーベルト毎時),滞在時間,被ばく人数を入力すると,ガン死亡の統計的な期待値*を算出します.計算の中身は単なる掛け算です.

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表中に書いていますように,計算はICRP1990勧告(Publication 60)のリスク係数によるものです.ただしこれは過小評価であるという議論もあります.また,外部被ばくのみの評価で,呼吸などでの放射性物質の体内取り込みによる内部被ばくは含みません.このことを理解された上でご利用下さい.

ところで,原子力安全・保安院発表資料を「原子力資料情報室」がまとめたところでは**,原子力発電導入から2008年までの労働者総被ばく線量は累積で約3,000人・シーベルトという値になっています.これに,上記エクセルシートにあるガン死亡のリスク0.05/人・シーベルトを掛けると,150人のガン死亡という数字になります.つまり,通常の労災などの事故による死亡のリスクに加えて,これだけのガン死亡が起きた,あるいは起きつつある,そのような業界である,業種である,ということです.

ちなみにICRP(国際放射線防護委員会)は,主に医者や放射線技術者など,放射線を「飯のタネ」にする人たちで構成された団体で,おそらく消費者や患者,労働者など放射線を「浴びせられる」人たちの代表は入っていないと思われます.したがって「業界寄り」で基準が甘いかも知れない,という用心は必要でしょう.
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* もちろん「期待」するわけではありません.確率統計の用語です.
**「原子力市民年鑑2010」,七つ森書館,2010年,233ページ.
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2017/7/12追記 ECRR 2010年勧告(日本語訳) 表7.5

      1Sv・人あたりリスク係数
影響     ICRP   ECRR
致死ガン    5%   10%
非致死ガン  10%   20%
遺伝的疾患   2%   4%
心臓病   想定せず   5%