クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』はとてもいい作品だ.ストーリーはむしろ単純だが,作りがとても丁寧で,2時間完全にイーストウッドの世界に引き込まれる.民族・人種問題など多様な社会的現実が豊富に織り込まれていて,含蓄が深い.しかしこの映画のコアをなすのは戦争と暴力の問題だと見る.(ただし戦争のシーンが一コマでも出てくるわけではない.)
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朝鮮戦争に従軍経験のある老人コワルスキ(イーストウッド)は,年寄りの冷や水どころかマッチョそのものに地域のゴロツキたちと渡り合う.しかし彼は戦争で無抵抗の相手を殺害したという深い心の傷を負っている.その彼が悪ガキたちと「体を張って」戦う最後のやりかたとは何か?

世界中で傲慢な力の支配を続けるアメリカ帝国の市民が,この映画からどこまでその深いメッセージ性を読み取るだろうか?

フランスのアルジェリア戦争を描いた「いのちの戦場--アルジェリア1959--」も優れた映画だ.なぜ今頃アルジェリア戦争か,と思われるかも知れないが,今もアメリカを中心とする帝国主義的な戦争が絶えないどころか,いっそうひどくなっている状況が監督の頭にあることは間違いない.公式サイトに「フランス版プラトーン」とある.

ハリウッド映画に戻るが,トム・クルーズ主演の「ワルキューレ」は二時間息もつかせない.ヒトラー暗殺計画のことは聞いていたが,これほど組織的で,しかも成功寸前まで行ったものだったとは知らなかった.反乱者は殺されたが,ドイツに偉大なる誇りという遺産を残した.ドイツだけでなく世界に.

映画の公式HPないし関連サイト

グラン・トリノ
http://wwws.warnerbros.co.jp/grantorino/#/top

いのちの戦場--アルジェリア1959--
http://www.1959.jp/

ワルキューレ
http://blog.goo.ne.jp/ryouta0520555/e/d9c20756447e6b2b4abd4e84454f9753