「社会評論」というマイナーな季刊誌がある(スペース伽耶発行).その最新号に武井昭夫氏の「護憲の闘い--その前提の考察」という論文*を見つけて読んだが,その中に共・社共闘についての気になる一節がある.武井氏は全学連創立時の委員長である.

共産党の現指導部の指向は,社民党との共闘に踏み出すようには見せながら,それはあくまで外見的なものとし,実質は自党を中心とした通称「革新懇」を統一戦線の実態と見なして,この枠の拡大を狙っているのである.一方,社民党は社民党で「共闘OK」と言いながら,身も心も民主や自民の動向をうかがっているのが真姿なのだ.この状況をどのようにして変えていくか.九条を守りたいと,「共社」共闘の成立と発展・強化を喫緊のものと考え,それを望む人は,いま非常に難しい局面に立たされているといえる.

政党という組織やその幹部と,市井で必死でなんとか九条擁護をと考えている人々との間に,物事の優先度についての考えの違いはありうることだ.少なくともこの数年は,九条と教育基本法が最大の政治の焦点であり,それぞれの組織の都合などはこれに比べたらはるかにマイナーな問題だと,組織の責任者にはそのように考えてもらいたいものだ.両党に限らず,運動や組織のトップにいる人たちの「本気度」を常にウオッチしている必要がある.

「統一戦線」的な組織としては,もう一つの「広範な国民連合」というものがあるが,これは「しんぶん赤旗」では全く取り上げられない.これが同紙に「認知」されれば,変化の兆しと見ることができよう.
______________________
*「社会評論」2006年春号,33ページ,戦後史の中の「近代の確立」と「近代の超克」 のパラグラフの最後の部分.

論文の各節の見出しは次のとおり
改憲阻止統一戦線への道---まず「共社」共闘から
支配階級の改憲構想---これとどう闘うか
革新側共通の二つの弱点---新社会党を例にして
状況はひどい---しかし絶望するのも早すぎる
護憲をやめた『朝日新聞』---ひどい、戦後史の捏造
戦後史の中の「近代の確立」と「近代の超克」
党派・宗派(セクト)を超えた協働を---それが正否の鍵

なお同誌には,拙文を掲載してもらったことがあります.2004年秋号(139号)の「『脳内リベラル』からの脱却」です.[2015.5 リンク修正]