北東アジアにおける核戦争の危機に関する声明
2017年5月4日
(日本語要約)
危険な言葉と軍事行動の応酬が1962年のキューバ危機と同様の事態をスローモーションで起こしている.その時のように事態が制御不能に陥るのではないかという尋常ならざる感覚にとらわれる.
キューバ危機に関して92年にマクナマラがカストロと対話した時,カストロが,アメリカとの核による対峙における自国の利益のためにはいかなるリスクも厭わない決意であったことを知った.金正恩が,恐らく自国の消滅のリスクも含めて同じ決意をしているかも知れない.
北朝鮮指導部は自国の安全と体制維持を望んでいるが,彼らの行動が米国などの対抗行動を引き起こし,状況が制御不能の状態に陥る恐れがある.核武装した両者の間で紛争になれば,核兵器の使用の可能性は避けられない.たとえ限定核戦争であっても東アジアの人々に破滅的な被害をもたらし,世界的なレベルでも劇的な結果を生じる.
キューバ危機と同様,明確で直接のコミュニケーション,相互理解,そして現実的な妥協を目指さなければならない.少なくとも双方は力による現状変更を行わないようにしなければならない.
軍事的緊張を和らげるには外交による道すじを復活させなければならない.ひとつの明白な選択肢は六カ国協議の再開であろう.
1962年に,ケネディとフルシチョフが直接対話し,必要な妥協をして,かろうじて破滅的な戦争の瀬戸際を引き返した.トランプ大統領と金正恩は生じつつある危機の破局的な終末を避けることが出来るだろうか?第一歩として必要な事は両者における抑制と責任ある行動であり,軍事的対峙からの相互撤退である.世界は破滅的な結果をもたらす劇的な紛争から難を逃れなければならない.
パグウオッシュ会議 会長 ジャヤンタ・ダナパラ
事務総長 パオロ・コッタ-ラムシノ
執行委員会議長 スティーブ・ミラー
評議員 マーク・スー
執行委員 鈴木達治郎
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(日本語要約作成:豊島耕一)