「反戦情報」最新号に「『脱被ばく』におけるメディアと専門家の責任」というタイトルの文章を寄稿しましたが,その中からトリチウムの生体影響に関する部分を転載します.以下で物理の話は定説であり間違いありませんが,マルチヒット効果が実際に起きているかどうかは仮説の域を出ません.
掲載号が旧号になったので,全文を転載します.こちらをクリック→htmlpdf
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トリチウム

 福島第一からの汚染水問題でにわかに有名になったが,別名「三重水素」と呼ばれるこの核種は,化学的には水素そのものなので除染フィルターで取り除くことができない.また,原発の平常運転でも大量に環境に放出されていた.これは全国でも玄海原発が特に目立って多く,過去最多では2010年1年間に10の14乗ベクレル(100テラベクレル)という値が九電のホームページで公表されている[注4].トリチウムはベータ線しか出さず,しかもそのエネルギーも極めて小さいため(セシウム137が出すベータ線の約30分の1),内部被ばくでのベクレル当たりの線量は小さい.このため大量の放出が容認されるなど,その危険性が軽視されてきたきらいがある.