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「中国が南西諸島に侵攻する」のか? -戦争防止のためのメモ- 増補改訂版 [反核・平和]

35cover.jpg3つ前の英文記事"Does China Invade the Nansei Islands?"の日本語原文です。まもなく発行される「九州から9条を活かす」35号[末尾に過去の販売情報]に掲載されます。(発行者が著作権・版権をclaimしないので、ブログでも全文公表。)
誌上では省略した、「軍備か非武装か」についての議論の方法についての部分も、図も含めて収録しています。(目次、リンクなど補強予定。体裁も。)

岸田内閣の軍拡政策、戦争誘導政策は恐るべき段階に移ろうとしており、少なくとも戦争が嫌だと思う人々にとっては、反対世論を高める努力が急務です。それに少しでも役に立てれば幸いです。この文や図のどのような部分でも、もし使える所があればぜひどうぞ。

内容としては、9月6日の投稿「中国が南西諸島に侵攻する」のか? - 平和のためのメモ -を増補・改訂したものです。また、軍備/非武装の議論の方法の部分は、おそらく「戦争体制の輸入ではなく、九条の輸出を」と題する記事がブログでは初出です。

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「中国が南西諸島に侵攻する」のか?
  - 戦争防止のためのメモ – 
    増補改訂版
                    豊島耕一
目次 1 はじめに 2 なぜ日本が「台湾有事」に巻き込まれるのか? 3 「台湾有事」とは本来は中国の内戦である 4 法的な妥当性は無視? 5 「備え」は逆に相手方の軍拡の要因、口実となる 6 「軍事ケインズ主義」からの離脱を 
"裏"目次 戦争開始のシナリオ 安全保障のディレンマ 野党が率先して平和外交を 「抑止」の語源と本来的不安定性 軍拡か軍縮・撤廃かの"量子コンピュータ的"議論方法 軍事研究は“知の暴力” 「自国の軍隊は常に自衛のため」は「お花畑」思考 葛西敬之氏の戦争待望論 平和のための投資戦略 付録 立憲民主党へのメール(12月3日)

要約
台湾"有事"を契機として日本国内で戦争が起きる可能性とは、いきなり中国が南西諸島に侵攻することが想定されているのではなく、懸念される台湾戦争に米・日がどういう形であれ参戦することで、その反撃(もしかしたら予防攻撃)として想定されるものであろう。

現在有効な日中間の条約や共同声明を前提とすれば、台湾戦争はあくまで内戦であり、これに日本が介入することはこれらを破棄することなしには出来ない。アメリカも今のところ「一つの中国」の立場であるから同様である。内戦であれば、それへの軍事介入には国際法上の根拠がない。

現在進められている南西諸島のミサイル基地化は、このような違法な軍事介入の準備であり、「安全保障のディレンマ」のメカニズムによって中国の警戒感を高め、軍拡を助長する。

軍拡と戦争の原動力の一つ、軍産複合体を抑制・廃絶するための「投資戦略」も重要である。

「抑止」による平和は不安定で戦争の延期に過ぎない。ユネスコ憲章前文にある、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」を想起すべきである。

1.はじめに
筆者は国際政治や軍事問題の専門家ではないが、しかし以下で述べるように、全くの一般的知識・常識の範囲内での議論でも、軍拡を当然視する世間の大勢とは反対の議論が可能で、むしろ説得力を持ち得るということを示したい。主に浅井基文氏の今年夏の講演録[1]に触発されてのものである。
また、このような軍拡の趨勢を止め、平和の方向へ世論を転換、九条を復権させる方法についても考察する。

2.なぜ日本が「台湾有事」に巻き込まれるのか?
朝日9/2の報道によれば、自民党副総裁の麻生太郎氏は、台湾"有事"を念頭に、「沖縄、与那国島にしても与論島にしても台湾でドンパチが始まることになれば戦闘区域外とは言い切れないほどの状況になり、戦争が起きる可能性は十分に考えられる」と語り、日本国内で戦争が起きる可能性に言及したという。そして「自分の国は自分で守るという覚悟」を強調したとある。

最近の中・台・米の軍事的緊張の印象から、またさかんに報じられる中国の軍備や基地の拡張、そしてウクライナへのロシアの侵攻もあり、多くの人が「そうかも知れない」と思いそうだ。しかし、なぜ日本国内で ― ここでは南西諸島を指すと思われるが ― 戦争が起きることになるのか、よく考えると不思議である。おそらく、台湾の統一/独立をめぐって、中・台間で軍事衝突が起こり、戦争に拡大、それにアメリカと日本が巻き込まれる、という展開を考えているのだろう。そうではなく、中・台関係と無関係に、いきなり中国が南西諸島に侵攻したり、ましてや日本本土に侵攻する、などということを考えなければならないとしたら、逆に日本が朝鮮半島や中国をいきなり侵略するということも(昔やったように)、当然平等に想定しなければならなくなる。

ではなぜ中・台間の軍事衝突に日本が巻き込まれることになるのか。その理由はただ一つ、日本の支配層がこの紛争に介入する意思、というより、介入するアメリカに追随する意志を持ち、その準備をしているということに他ならない。日本が正面に立って介入するのではなく、アメリカの戦争の後ろについて自衛隊がこれに加わる、あるいはひょっとすると逆に、台湾と日本に戦争をさせて、アメリカはそれを後ろから見ている、ということになるのかも知れない。もちろん沖縄を中心に日本はアメリカに基地を提供していて、しかもアメリカとの軍事同盟によって自衛隊は事実上米軍の指揮下にあると言われ、戦争ともなればこれら日・米の基地は当然相手方の攻撃対象になる。

3.「台湾有事」とは本来は中国の内戦である
さて、そもそも危機が言われる台湾戦争に日本やアメリカが関わる、関わらなければならない理由があるのだろうか?

1972年の日中共同声明[2]の第2項と第3項には、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認」し、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する」とある。また1978年の日中平和友好条約[3]第三条には、「・・平等及び互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則に従」うとある。またアメリカも、今のところは「一つの中国」の立場を取っている。つまり、もし台湾戦争が起こったとしても、それは「内戦」であることを米・日ともに認めざるを得ないし、内戦には関与できないはずだ。中国が台湾「統一」のため武力に訴えることは穏当ではないどころか最悪の行為だが、だからと言って外国が武力でこれを阻止することは出来ない。少し前には、香港をめぐる「一国二制度」の約束を破っての強引な併合にも、外国がこれに軍事力で介入できなかったのと同じ事だろう。

4.法的な妥当性は無視?
このような法的な制約があるにも関わらず、冒頭に引用した麻生発言のような政治家だけでなく、テレビに出るような学者・専門家連までもが、台湾戦争に日本が加わる、ないし巻き込まれることがあり得ること、それがやむを得ないことのように語っている。しかしそのことの正当性、法的根拠についての議論を、このような論者から聞いたことがない。ただ聞かれるのは、このような軍事緊張をまるで自然現象でもあるかのような前提として、「安全保障環境の悪化」という枕詞で防衛費増大を当然視する、あるいはこれに明確に反対しない言説である。

例えば、軍事問題の専門家を自認する小泉悠氏は、防衛省が過去最大の規模となる2023年度概算要求を決定したニュース(日経8月31日)への短いコメント[4]で、次のように述べている。前半の部分を引用する。
昨今の安全保障環境を考えるに、防衛費の増大がやむを得ないのは確かであると思います。しかもロシアのウクライナ侵略によって米軍の抑止リソースはかなりの程度欧州正面に回さざるを得なくなるでしょうから、対中抑止の信憑性を確保する上で日本の果たす役割はかなり重要である筈です。
ここでは「米軍の抑止」なるものが当然のように前提とされ、したがってそれを補完するのが日本の当然の役割だという理屈だが、その元々の正当性や根拠はどこか他では語られているのだろうか。

関係する国際法をネットで調べると、国連憲章が認める武力行使禁止原則の例外は、(1)武力攻撃の発生時に緊急的な個別的または集団的な自衛権の行使、(2)平和に対する脅威、破壊、侵略行為に対する措置として安保理が決定する行動、の二つだけのようである[1は国連憲章51条、2は42条]。しかし(1)に関しては台湾は加盟国ではないし、(2)は安保理の決定を待たなければならない。ロシアの侵攻を非難する根拠には当然ながら国連憲章が引用されるし、おそらく小泉氏も同じだと思うが、アメリカなどの中台戦争への介入の場合は国連憲章はどうでもいいと考えるのだろうか。それとも他に法的根拠があるのだろうか。

nansei.jpgまた小泉氏はさらなる「防衛費」増大を認めるのであるから、南西諸島のミサイル基地化という自衛隊軍拡にも反対ではないのだろう。しかしこれが「必要」となるのは、対・ロシアでも対・朝鮮(DPRK)でもなく、まさに台湾戦争においてだろう。しかし、上に述べたように日本は台湾戦争に関与することは条約上も国連憲章からもできないのだから(もちろん憲法前文や9条からもそうなのだが、ここではあえて触れない)、これに備えることなどあり得ないはずなのである。(右の図は毎日新聞2022/5/2から)

法的根拠がないなら、法的議論をバイパスできる状況を作ればよい。その手口を、新刊の「非戦の安全保障論」という本の中で、柳澤協二氏が説明している[5]。その部分を引用する。
実際にはどうやるかというと、トンキン湾事件のようにアメリカ海軍の船が中国から攻撃されたということで、個別的自衛権を理由にしてアメリカが参戦をして日本は2015年の新安保法制で法制化された米艦防護とか集団的自衛権で入っていくことになるのでしょう。あるいは、日本の米軍基地が攻撃されれば、日本の領域内への攻撃は安保五条にいう自衛権発動のトリガーになるわけなので、日本としては個別的自衛権で入っていくことになる。
このような、まさに脱法的な戦争のシナリオを許してはならない。そのためには、この本の共著者でもある伊勢崎賢治氏や、長年琉球弧への自衛隊軍拡の問題を警告している小西誠氏が主張する「琉球弧の非武装地帯化」が重要であり、その世論を強めなければならない。

5.「備え」は逆に相手方の軍拡の要因、口実となる
南西諸島での自衛隊軍拡が名目通りの純然たる抑止力向上のためとしても、周辺国から見れば紛れもなく脅威であり、よく知られた「安全保障のディレンマ」のメカニズムによって、他国の軍拡の要因、さらにはその正当化の根拠となる。つまり「抑止」のつもりが戦争を呼び込むことになるだろう。中国の軍拡は速度も規模も大きく、それに比べれば日本のそれは相対的に小さいのかも知れないが、安保条約で日米一体としての軍事力、と見るべきであろうし、当然中国もそのように捉えているだろう。むしろ実態としては、先に述べたように自衛隊は米軍に従属しているのではないか。もちろん日本には、沖縄を中心に多数の米軍基地がある。

ロシアのウクライナ侵略に関しては、NATOの東方拡大だけでなく、直前のウクライナの軍拡もその遠因になったのかも知れない。少なくとも前者がプーチンに口実を(口実であって根拠ではない−念の為)与えたことは周知の事実だろう。もちろん逆に、ウクライナ自身の軍拡が十分でなかったから侵略を招いた、という議論も可能だろう。どちらが正しいか、それを「正しく」判定できる方法論があるとも思えない。

台湾は国連加盟国でないとは言え、14カ国が国交を持ち、さまざまな国際組織にも参加していて、実質的に独立国の性格が強い。そのような地域と住民を中国が武力で強引に支配下に置こうとする行為に出るとすれば、すでに述べたようにそれは全く不当だ。同時に、それに外国が介入することは前者の不当性を薄め、ないしは打ち消し、逆に正当化さえしてしまうかも知れない。「武力による国家分断を阻止するため」のやむを得ない措置である、との口実ないし理由を与えることになろう。おそらくより大きな人命の損失と共に。

たとえ最終的に軍事力に頼むとしても、外交努力を最大限に行なって事態の沈静化に努めるのが政治の役割である。しかし、朝鮮のミサイル実験に対してもそうであるが、ほとんど外交らしい外交はこの数年来見られないのではないか。政府がやらないのなら野党が率先してやるべきだろう。そのような呼びかけを5月に埼玉の市民グループが立憲野党に対して行っているが[6]、野党の反応はどうだったのだろうか。

軍事力での「抑止」による平和は不安定で、よくても戦争の延期に過ぎない。「抑止」という何やら人畜無害そうな言葉に翻訳されたdeterという英語は、私のPCにプレインストールされているオックスフォード英語辞書によると、ラテン語の’de’と’terrere’が語源で、「脅しつけて止めさせる」という意味である(したがって「脅止」という字を当てるのが妥当だろう)。そのような脅し合いが安定であるはずがない。’terrere’は「テロ」の語源でもある。

[次のパラグラフは、同じ冊子シリーズの32号と34号に書いたため、紙上のバージョンでは2つの図も含めて次のネット上のリンク先だけを示すにとどめている。
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-07-04#fig  ]


軍備を持つのが安全につながるのか、それとも憲法9条の非武装が平和をもたらすのかについて、逐条的な議論を始めれば果てしないやりとりになる。この問題を、大袈裟に言えば量子コンピューターばりに「並列処理」思考するための図表を筆者は提案している。軍備維持・増強派と軍備撤廃・縮小派の言い分とそれぞれの利点・欠点とを、平時と戦時に分けた2列(軍備増強派/撤廃派)×4行(平時と戦時の利害得失)の表にしておくのである。例えば、その軍備撤廃派・平時の利点の欄には「他国に脅威を及ぼさない・安心感を与える」と言うように。この表に両派の言い分の考えうる全てを記入して俯瞰すれば、「万全」な方法などあり得ないことを確認でき、比較の問題であることが分かる。次にこの表の「時間発展」、つまり軍縮・撤廃が進んだケースと、軍拡が進んだケースとで、この表のどの部分が拡大・縮小するかを考える(下図参照)。そうすれば軍縮・軍備撤廃のケースが好ましい未来に繋がることが分かるだろう。
gunbi-to-hibusou-pattern2.jpg
jikan-hatten-w1200.jpg
また、軍事力というのは工業技術と不可分であるためその技術競争は不可避で、それを一定の水準に止めることは即、遅れを取ることになる。つまり軍事バランスとはその力が互いに増大し続ける「バランス」のことで、この側面からも必然的に不安定である。これを防ぐには、縮小バランスに移行する意図的な努力か、軍備撤廃を目指すほかはない。また、このような知恵を育てていくことには無頓着で、殺人の道具の技術ばかりを限界もなく発達させ洗練させていく人間の知のあり方こそ問われなければならない。「軍事研究は“知の暴力”である」という言葉を定着させたい。

軍事力を一旦拡大させてしまうと、それを縮小に向かわせることは非常に困難になるであろうことも、容易に想像できる。また、本シリーズの前34号で筆者の「発言」として文章にしてもらったことの繰り返しになるが、どの国の軍隊も「防衛のため」の名目で保持するし、決して「侵略省」などの看板は掲げない。しかし数学的にはそれが侵略のための軍隊になるか防衛の軍隊なるかは、数学的には50%−50%であることは簡単な考察から分かる[7]。「防衛」のつもりで作っても、独裁的・好戦的な指導者を選んでしまえば終わりだ。どの国の軍隊にも、もし独裁者が出たら自動的にスイッチがオフになるような安全装置は組み込まれていない。今のロシアのプーチンを見れば明らかだ。いや、「民主主義」を掲げるアメリカがずっと戦争国家である。したがってそのような考察もない軍備増強論というのは、それこそ「お花畑」と言わざるを得ない。やはり200年前のカントの「常備軍の廃止」(『永遠平和のために』)にこそ答えがあるだろう。

6.「軍事ケインズ主義」からの離脱を
別の「自発的に作動する」経済面からの軍拡の圧力にも注目しなければならない。「軍産複合体」の圧力である。最近では「軍事ケインズ主義」[8]という言葉が使われるようだ。軍事産業を経済の維持発展のエンジンの一つに数えるという態度だ。はっきり言えば「吸血鬼経済」である。古くは、アメリカのアイゼンハワー大統領が離任するときに行った1961年の「軍産複合体演説」[9]の中で警告し、最近では2016年、日本の民放テレビ番組「池上彰緊急スペシャル」[10]が詳しく、かつわかりやすく取り上げた。

kenbo-t.jpgこの「軍事ケインズ主義」を、しかもあからさまな戦争待望論の言葉にした政財界の有力者がいたことが最近公になった。実は筆者が8年前にSNSで得ていた情報なのだが、プライベートなオペラ鑑賞ツアーの通訳をしていた人の証言である。1996年8月、旅の途中のレストランでの食事中、その人物は突然次のような話をし始めたというのだ。
「そろそろどこかで戦争でも起きてくれないことには、日本経済も立ち行かなくなってきますなあ。日本の国土でドンパチやられたのではたまらないから、インドあたりで起きてくれると、わが国としては一番ありがたい展開になる。」
さすがに同席者一同は茫然としたとのことである。SNSでは実名は伏せられていたが、岩波の「世界」2019年12月号とその翌月号に掲載された斎藤貴男氏の記事で、葛西敬之(よしゆき)という実名も含めて詳細が公になった。葛西氏は国鉄分割民営化で権力を振るい、JR東海社長、その後2006年には国家公安委員や教育再生会議委員にも就任している。また安倍晋三氏の財界応援団「四季の会」の創設者でもある。(今年5月に病死)。そのような、長きにわたって国家権力の中枢部に関わっていた人物の本音が、実はこのような恐るべきものであったということは、もっと多くの人に知られてもいいだろう。もちろん本人も、また誰も決して「公式」にはこのような言葉を発することはないだろうから、この通訳者の証言は貴重である。

このような、経済に組み込まれた戦争の原因を取り除くにはどうすればいいのだろうか。もちろん平和と軍縮を志向する政治の実現が決定的だが、一方でこのような企業や資本そのものが政治に決定的な影響力を持つ。したがってこれらを直接ターゲットとする市民運動が必要だ。例えば、このような企業に資金が集まらないようにする努力の余地があるだろう。投資の世界でも、実際にはうわべだけかも知れないが、SDGSやESG(環境・社会・ガバナンス)という掛け声が聞かれる。後者にはカンバン自体に”S”、つまり社会性が入っていて、これは「人権問題への対応」と理解されている。また前者にも「平和と公正」(Peace, Justice and Strong Institutions)が謳われている。これらのスローガンはあからさまに軍需産業を批判する、敵に回すような意味合いも言葉も、今のところは付随しているとは見なされていない。しかし警察などに必要とされる以上の武器、つまり爆撃機やミサイルなどの明白な大量殺戮兵器(原爆だけが大量殺戮兵器ではない)と、それを製造する企業が、「平和と公正」や「人権問題への対応」と整合性があるはずがない。

今日、日々の食事も満足に出来ない人々が多くいる一方で、日本の投資家人口は2,700万人と推計されている(2021年の野村アセットマネジメントの調査)。いわゆる「投資家」ばかりではなく、預金金利がゼロに等しい中、銀行預金の一部を投資に振り分けた人も多いだろう。この人たちの幾分かでも、軍需産業に投資しない、軍需企業やそのサプライチェーンの株が組み込まれた投資信託を使わないようになれば、何がしかのブレーキになるだろう。またそのようなことが「運動」として公然化すれば、軍需企業と戦争との結びつきが可視化される効果も期待できる。核兵器企業に関しては、これに投資しない運動をICANなどが進めているが、これを武器一般に拡大すべきだろう。機関銃以上の「効率的な」殺人装置は大量破壊兵器と見做されるべきだ。(2023/2/27追記:後日の関連記事→投資信託に含まれる軍需株

ユネスコ憲章前文の「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」を想起しよう[11]。これは精神論でも理想論でもなく、恒久平和への唯一の道であろう。つまり、平和主義者が増えないと世界は平和にならないのだと思う。国家も同じで、平和主義の国家が増えることが決定的に重要だと思う。

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[1] 浅井基文「中国との友好関係阻む日本の執拗低音 国交回復五〇周年、日中関係の未来を探る」HOWS2022夏季セミナー報告, http://www.hows.jpn.org/shoko/1080howsseminar.html
[2] 日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html
[3] 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_heiwa.html
[4] https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA265VN0W2A820C2000000/#k-think
[5] 柳澤協二,伊勢崎賢治,加藤朗,林吉永,「非戦の安全保障論」,集英社新書,2022,p.96.
[6] 「立憲野党代表団に平和外交を求める会」の4野党への呼びかけ文をブログに転載。
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-05-28
[7]「日本の科学者」2005年1月号掲載の「『攻められる』ことと『攻める』ことの等確率性」参照。次に転載: http://ad9.org/pegasus/docs/nagasaki/symmetry-kant.pdf
[8] チャルマーズ・ジョンソン,「軍事ケインズ主義の終焉」,『世界』2008年4月号.次のサイトで無料公開: http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200804111727305
[9] 筆者による全訳を次に公開. http://ad9.org/pegasus/kb/EisenhowerAddress.html
[10] フジテレビ2016/2/12の,「池上彰緊急スペシャル!! なぜ世界から戦争がなくならないのか」.筆者ブログ2016-02-13,2016-02-18に詳細あり.
[11] たとえば次の文科省のページ: https://www.mext.go.jp/unesco/009/001.htm
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立憲民主党へのメール(12月3日)
軍事費増、「敵基地攻撃能力」反対
どこの国も軍事力を持つのは「自衛のため」と称していますが、いったん好戦的な、独裁的な指導者が権力を握った時、その軍事力のスイッチが自動的にオフになるような安全装置はついていません。ロシアのプーチンを見ればお分かりでしょう。あるいは、「軍事ケインズ主義」のアメリカは戦後絶え間なくどこかで戦争をしています。
このようなことを考えず、自国の軍隊は常に「自衛のため」と思い込むのは、それこそ「お花畑」の思考と言うべきでしょう。
憲法9条の非武装・平和主義のソフトパワーで、外交によって相互信頼、平和を作るのが唯一の道です。「抑止力」の英語はdeterrence、つまり「脅しつけてやめさせる」の意味です。それによる平和は不安定で、戦争の延期に過ぎません。
現状の自衛隊でさえ9条違反、つまり違憲性は明白なのに、どんな理由であろうと他国の領土への攻撃を容認するなどあり得ません。もし容認するなら「立憲」の看板を外して下さい。

https://cdp-japan.jp/form/contact

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本誌は、12月8日夕の、次の集会で販売されました。:福岡県中小企業振興センター301号(JR吉塚駅(東口)より徒歩約1分)「12.8不戦の誓い!」(講師纐纈厚さん・山口大学名誉教授)」(平和・人権・環境福岡県フォーラム,戦争への道を許さない福岡県フォーラム主催)
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