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アンジー・ゼルターのライト・ライブリフッド賞受賞スピーチ [反核・平和]

(末尾に関連リンク)
English title: Right Livelihood Award Acceptance Speech of Angie Zelter
ライト・ライブリフッド賞は、「第二のノーベル賞」とも言われる国際的に著名な賞で、毎年受賞者を発表しています。日本人の唯一の受賞者は1997年度の高木仁三郎氏(故人)ですが*、この賞のことが全くと言っていいほど報道されないため、このこともほとんど知られていないようです。(*団体では生協連が1989年に受賞。外国の最近の有名人では、グレタ・トウーンベリさんが2019年。) この賞のサイトにある、簡潔な説明を引用します(DeepL訳)。
勇敢な先見性のある人々の行動を評価し、世界中でインパクトのあるつながりを構築することで、この賞は緊急かつ長期的な社会変革を後押ししています。これまでに73カ国から186人の受賞者がこの賞を受賞しています。
非暴力直接行動(NVDA)によって、市民の手で直接核兵器を廃絶する取り組みを進めている「トライデント・プラウシェアズ」が2001年にこの賞を受賞しました。アンジー・ゼルターによるその受賞スピーチの全訳を紹介します。翻訳中の、彼女の本"Activism for Life"の付録として収録されていますが、既に原文は公表されてりるので、日本語訳(手動)でも公表します。
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RLAT3Colour.JPGトライデント・プラウシェアズを代表しての
アンジー・ゼルターの受賞スピーチ、2001年12月7日
市民による核廃絶

私たちの世界は死につつあります−精神面で、そして物質的にも。恐れ、攻撃と強欲、偏狭な国家利益の追求、他者に対する幼稚な優越意識と支配欲は、ほとんどの国に共通する課題です。しかし、自らを地球市民と定義し、生命は相互に密接に結びついており、他者が苦しみ続けている間は決して完全な人間にはなれないことを知り、愛と正義と非暴力が生命の本質であることを知っている人々がますます増えています。そして、私が希望を持っているのは、一般の人たちが極めて様々の方法で責任を取っていることです。彼らは、戦争や不正、管理と支配を乗り越え、自由で公正な、愛に満ちた多様性の世界を実現するために必要な変化を起こしているのです。

この命のネットワークのほんの一端を紹介し、私たちの「市民による核廃絶」の概要をお話ししたいと思います。

私は核兵器保有国の出身です。私のたくさんの仲間が、戦争を終わらせ非暴力による紛争解決を勢いづける第一歩として、非常に実際的なレベルで、私たち自身が核廃絶のプロセスに関与する必要があると判断しました。私たちは国が核廃絶をするまで待つことは出来ません。そこで私たちは、国際法を根拠としてイギリスの核兵器の合法性を問う「トライデント・プラウシェアズ」というキャンペーンを始めました。

スコットランドのグラスゴーから数マイルのファスレーンにイギリスは4隻のトライデント原潜の基地を置いています。それぞれの原潜は100キロトン核弾頭を48個装備しており、つまり192個の独立の目標を狙うことができ,そしてその1発だけでヒロシマ原爆の8倍も強力なのです。これらの弾頭の1個だけを使うことも違法です。なぜならその威力があまりにも強力かつ無差別であるため、国際人道法に反しないように使うことはできないためです。想定される武力の行使が違法である場合、そのような武力を行使する用意があると表明することは、禁止されている脅しです。イギリスのトライデント・システムは「使用の用意があることを表明」という政策の下に配備されています。それが「信頼性のある最小限の抑止力」が意味するところです。

他の7つの核兵器国もまた国際法システムを損なう平和に対する罪を犯しています。非核兵器国は大国に効果的に対抗できるよう強力出来ていないように思われ、そのため国際法が目の前で崩壊し、宇宙での新たな軍拡競争に突入しているのです。

私たちは皆、もし核廃絶を望むなら、政府がそれを行うのを待っていてはダメだということをもう学んでいます。彼ら政府は核兵器をなくすと言う約束の条約や協定に何回も署名しています。最新では昨年の核拡散防止条約再検討会議において。しかし、その一方で、トライデントの後継システムを開発し、アメリカのスターウオーズ計画や「国家ミサイル防衛」システムを後押しし、核抑止力に依存すると言い続けているのだから、これらの約束はいったい何を意味すると言うのでしょうか?

核兵器を廃棄するという政府の約束は役に立ちません。それは、トライデント・プラウシェアズの活動家がこの前、4月にトライデント原潜の側面にペンキで書いたことと全く同じです。もし私たちが核廃絶を望むなら、私たち国民がその責任を負わなければなりません。これが「市民による核廃絶」の意味するもの全てです。私たちがトライデント・プラウシェアズを始めたのもこのためであり、また、この途方もない殺人マシンを世界から排除しようと50年も闘って来た幅広い平和運動と協力するのもこのためです。

1998年にトライデント・プラウシェアズはイギリスのトニー・ブレア首相に対して、英国のすべての核兵器を撤去することによって国際法に従うように求め、それがなされなければ彼の代わりに運動のメンバーがそれを実行するだろうとの、直接の申し立てを行いました。私たちは、自分たちで核兵器を撤去するとの個人的な誓約をする人々を組織し、政府が核廃絶の作業を引き継ぎ、核不拡散条約において政府が世界に約束した完全な核廃絶を履行するまで、この作業を継続することを表明しました.

私たちの実際的な核廃絶のための平和的な行動への献身は、国際法と、生きるための基本的人権とに基づくものです。たくさんの国の人々が「地球市民」として集まり、核兵器システムを平和的に撤去する仕事を始めました。これは暴力的あるいは犯罪的な損壊でも、また破壊活動でも秩序妨害でもなく、実際的で合法的な「市民による核廃絶」なのです。

もちろんイギリス政府とその政府機関はこのようには考えません。1998年にトライデント・プラウシェアズが活動を始めて以来、おもにクールポートとファスレーンでの封鎖・非武器化キャンプを中心に1,500人以上が逮捕者が出ています。これまでに220件以上の裁判が行われ、警察での留置期間を除いた刑務所での延べ拘束日数は1,400日以上になっています。そしてこれまでに科された多額の罰金は原則の問題として支払わないため、執行吏による財産差し押さえが行われ、またさらなる禁固刑を科される恐れがあります。

実際的な核廃絶行動に参加した人々は、時代遅れの司法システムに新鮮な空気を吹き込んでいて、核兵器はテロリズムの殺戮マシーンだと遠慮会釈なく述べ、またもし法律が国家による恐喝や大量破壊を違法としないならば、法は尊重するに価しないものになってしまうと述べています。スコットランドのヘレンズバラ地方裁判所は、核兵器国の悪と対峙(たいじ)する人々の、歴史的で感動的な舞台となっています。より多くの人々が、自分の信念のために立ち上がり、核兵器には「ノー」、非暴力による紛争解決には「イエス」とはっきりと声を上げる用意があることを自覚するにれて、英国における変化の可能性は計り知れないものとなっています。

トライデント・プラウシェアズには現在、核による犯罪の防止を誓約し2日間の非暴力ワークショップに参加した14ヶ国158人の「地球市民」がいます。他国の市民が私たちと一緒に非武器化活動に参加し、裁判所に出廷し、また刑務所で過ごすことは、当局側にとってはより厄介な事です。政府や裁判所はイギリスの核兵器は純粋にイギリスの国内問題であるかのように装いたがっていますが、外国人が法廷に立ってトライデントをなぜ脅威と感じるか、なぜ他国の「地球市民」と仲間を組んだのか、そしてなぜそれを平和的に非武器化するのかを説明すれば、この立場が成り立たないことが分かります。私はここで言っているのはトライデント・プラウシェアズの正式の誓約者についてです。もちろん数千人のアクティブなサポーターがいますし、アイルランドやベルギー、オランダからも大勢のグループがやってきて、私たちの封鎖に参加してくれています。

私たちは、私たちの計画、動機、組織構造を一般市民、政府、軍に公開することを徹底しています。「トライ・デンティング・イット・ハンドブック」や政府との手紙のやりとりを含め、私たちのすべての資料を掲載した、自由にアクセス可能なウェブサイトを用意しています。私たちは常にイギリス政府に対して次の問いかけをしていますが、彼らは決して答えることができません。その質問は、「どのようにすれば100キロトンの核弾頭が軍事目標と無辜の市民とを分けて使うことができのるか?」と言うものです。

私たちは議員に、私たちを支援するための請願書に署名するよう勧めており、現在約80名が署名してくれています。彼らは私たちの要請書への回答がなされるよう手助けをし、それぞれの議会で私たちのために質問をし、今では私たちの非武器化アクションに加わり始めています。私たちが前回10月にファスレーンで行った大規模封鎖では、1,000人以上が参加し、平和的に基地を封鎖したスコットランド、英国、欧州議会の議員たちが逮捕されました。また、それ以前に行われた封鎖には30人以上のスコットランドの教会の聖職者や、スコットランドの著名な上級刑事弁護士も参加しています。彼らは私たちと共に座り込み、「治安妨害」の罪で逮捕されました。スコットランド議会議員のトミー・シェリダンは最近、この罪で無罪となり、またしても裁判に勝利しました。国側は間違いなく上訴するでしょうし、欧州裁判所に提訴される可能性があります。しかしこのような道筋はどのようなキャンペーンにおいても不可欠であり、「核テロリズム」のねじれたロジックに挑戦する機会をより多く与えてくれるものです。

このような支援は、著名な作家や俳優、何百人もの個人からの支援と合わせて、支援者の裾野の広さを示しており、誓約者たちを簡単に無視することができなくなっています。

私たちは、トライデントに反対するための方法が、トライデントの代わりに何を望むかという私たちのビジョンと一致していることを望んでいるので、このように安全でオープンかつ説明責任のある方法で行動しています。私たちは、私たちの方法を紛争の良い解決プロセスの一部と見なしています。私たちは、この仕事をする必要がなく、国が私たちのためにそれをやるよう説得できることを望んでいます。そのため、彼らには十分なブリーフィングを行い、対話と交渉の窓口を開いています。長期的には、私たちの軍備撤廃の方法は「抑圧に対する非暴力抵抗」の持続的なネットワークを形成するための実験であると考え、それがやがて世界中で軍事力に取って代わることを期待しているのです。

すべてのトライデント・プラウシェアズの誓約者はアフィニティー・グループ(よく知り合った小グループ-訳注)に所属し、安全と非暴力の基本ルールに同意する必要がありますが、その後は希望に応じて自律的に活動することができます。様々の非武器化活動の形態が選択されました。封鎖、フェンス切断、原潜に泳ぎ着いての装備破壊、研究施設の装置解体、軍用車両の機能停止、軍用機材への戦争犯罪警告のペインティング、基地従業員への「戦争犯罪人になることを拒否せよ」というビラ配りなど、多岐にわたります。これらの非武器化行動の大半では、基地封鎖とフェンス切断に人々を巻き込み、法廷を塞ぐ混乱を最大化することで最小の被害で済んでいます。

しかし、この1年半の間に少なくとも9件の、実質的なダメージを与える非武器化の試みが実行されました。そのうち3つのグループは数十万ポンド相当の損害を与え、トライデント関連施設の稼働を遅らせる事に成功しました。例えば、2000年11月にスーザンとマーチンはウィッテリング基地の警備フェンスを破って格納庫に侵入し、核兵器輸送車両の1台を破損させて、ファスレーンまでの核弾頭輸送が出来ないようにしました。私たちはこれらのダメージをすべて「非武器化」、「核犯罪防止」と呼んでいます。

私たちの行動は数百件もの裁判になっています。すべての裁判は重要です。なぜならそのひとつひとつが国の最も脆弱なところ、つまり主要な法と秩序の問題で国と対峙しているためです。だからこそ、私たちのキャンペーンは政治的、法的にも大きな波紋を投げかけているのです。伝統的に法律は、「国家」よりも「国民」に対して、主に貧しい人々や恵まれない人々に対して使われて来ました。しかし今や人々はこれを逆転させ、国家の柱の一つである軍隊の法的基盤全体、ひいては正当性に公然と挑戦しているのです。彼らは、国家や企業中心の法律ではなく、国民中心の法律を要求しているのです。

私たちの実践的な市民による非武器化キャンペーンでは、法制度全体に挑戦するいくつかの壮大なアクションにつながりました。ほんの2、3の例を挙げましょう。1999年2月、2人の女性が泳いでバローのドックに入り、原潜「ヴェンジャンス」に上がり、コニングタワー(潜水艦の上部タワー部分)の試験装置を破壊しました。この行動は「ヴェンジャンス」がミサイル積み込みのためにアメリカに出発するのを数ヶ月遅らせました。2年半の間に3度の再審が行われ、結局、彼女たちの公然たる行為が犯罪なのか、それとも彼女らが申し立てたように正当なものなのか、どの裁判の陪審も判断ができなかったため、起訴は取り下げられました。

同じ年の6月、私たち3人は、海中のトライデントの「不可視化」を維持するための「メイタイム」と呼ばれる実験室バージを非武器化しました。コンピュータや監視・試験装置などをすべてゴイル湖に放り込んで実験室を空っぽにしました。さらに潜水艦模型の制御ボックスを壊し、他のさまざまなトライデント研究装置の電源供給を切りました。5ヶ月間の拘留ののち、私たちは国際法の下でこれを行う権利があると説明しました。

グリーノック地裁でマーガレット・ギンブレットという勇敢で人間的な判事の指示により私たちが無罪となったことは、政治的な、そして法曹界の騒動となり、法務総裁は、他の裁判官がこのようなケースで今後無罪としないように、トライデントに関する国際法の問題のいくつかを検証するようスコットランド高等法院に要請するに至ったのです。高等法院が、国際法は戦時にのみ適用されると誤って述べ、現在行われているイラクへの空爆は「戦争」ではないとほのめかすひどい意見を出したあと、法的な議論が続いています。

弁護士たちは、ニュルンベルクや東京の戦争犯罪法廷で導き出された人道法の根幹を否定するスコットランドの法制度の是非を論じ続けるに違いありませんし、私たち一般市民の運動は高等法院によって止められるものではありません。 私たちは、大量殺人が犯罪であるという単純な事実を認識することに何の困難も感じない普通の人々の常識と単純な道徳観によって、法律を取り戻そうとしているのです。私たちは、欧州人権裁判所に控訴しましたし、すべての専制政治はいずれ破綻し、真実は最終的に勝利するという信念のもとに、非武器化の行動を続けています。

もちろん、このような挑戦はこれまでの55年間に及ぶ反核運動中で何度も行われました。核兵器は常に違法であり、60年代の東京での下田裁判では、広島と長崎への原爆投下が戦争犯罪であることが明確に示されました。しかし、これほど明確かつ的確に、一貫した方法で法律を利用した市民運動はほとんどありませんでした。トライデント・プラウシェアズは、その運動全体の基盤を国際法に置き、核兵器を違法化し私たちの行動を合法化するのにそれを使い、非常に公然と、かつそれをめぐる対立が鮮明になるような方法で行ってきたので、無視することはできません。私たちは、道徳と法律の関連性を強調することで、道徳的な議論も前面に出しています。

私たちの主張の核心は非常に単純明快です。核兵器は大量破壊兵器であり、それゆえ、いかなる精密さでも、また不正をただすとのいかなる口実でも、使用することは出来ません。その使用は本質的に破滅的な規模での大量殺人であり、数千の核兵器の使用へとエスカレトする可能性があるため、地球上のすべての生命を絶滅させかねないのです。法は倫理的価値に基づいており、人間の一般的な道徳に適合する限りにおいてのみ、尊重されます。政府、兵士、軍隊はその正当性と権力を法律から得ており、したがって法律は彼らにとって非常に重要です。兵士と普通の人殺しを区別する唯一の点は、社会のためにある種の殺人を行う法的許可を与えられているということです。この合法的な殺人は法律によって慎重に管理されることになっています。その法律の中で最も重要なのは、無差別大量殺人を違法とする国際人道法です。グリーノックでの無罪判決、マンチェスターでの2件の判決は、私たちの犯罪的意図を晴らすと同時に、英国の核兵器部隊の犯罪的意図を明確に指摘するものでした。

トライデント・プラウシェアズは、権力を取り戻してそれを人間の基本的なモラルを高めることのできるプロセスに転換することを基本としています。私たちのメッセージが5歳の子供にも理解できることは、恥ずかしいことではなく、誇らしいことなのです。

これが私たちのメッセージです。殺人は悪です。大量殺人は悪です。大量殺人による脅迫は私たち自身の人間性を否定することであり、自殺行為です。何かが間違っているとき、私たちはそれを止めなければなりません。破壊のためのマシンを解体することは、私たち全員が参加できる現実的な愛の行為なのです。どうぞ参加して下さい。私たちの力を結集すれば、誰も止めることはできないのです。
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関連リンク
「トライデント・プラウシェアズ」日本サイト(更新停止中)
  その中のアンジーの主な文章から
・・・「私たちはなぜ核兵器を破壊するのか」 岩波書店「世界」2000年9月号掲載
・・・「地球市民の責任 東チモールとプラウシェアの平和運動」 岩波書店「世界」1999年11月号掲載

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