SSブログ

ロシア・ウクライナ戦争に対する小西誠氏の発言 [反核・平和]

元自衛官で、反戦・平和のための発信を続けておられる小西誠氏のロシア・ウクライナ戦争に対する最新の発言を紹介します。3月21日の「ロシアーウクライナ戦争についての覚え書き的試論」と、5月14日の「ウクライナ戦争は、米国の「武器貸与法」(レンドリース法)の決定ーウクライナへの巨額軍事援助によって、米国とロシアとの「帝国主義間戦争」へ、実体的にも変化しつつある!」という、Facebookでの発言です。ご本人の許可を得てそのまま転載します。ブログだとより検索にかかりやすいと思います。(23日追記:英訳
Facebookのグループ「反戦平和のための軍事研究」の次の記事です。
https://www.facebook.com/groups/135517890608013/posts/1207075753452216/

まず、3月21日の書き込みで提案されている、現在の反戦のスローガンを冒頭に紹介します。
*「ロシアのウクライナ侵攻反対」
*「米ロの帝国主義間戦争反対」
*「アメリカのNATO東方拡大戦略反対」
*「ウクライナの中立政策支持」
*「ウクライナーロシアの即時停戦を」
*「市民の犠牲をなくすためにキエフ等の無防備都市宣言を」
以下、本文です。
------------------------------------
(5月14日)
●ウクライナ戦争は、米国の「武器貸与法」(レンドリース法)の決定ーウクライナへの巨額軍事援助によって、米国とロシアとの「帝国主義間戦争」へ、実体的にも変化しつつある!
私は、ウクライナ戦争の勃発後、
「このロシアーウクライナ戦争の政治的性格は、端的にいえば、『米ロ間の帝国主義的争闘戦』(覇権争い)に、ウクライナ民族運動が巻き込まれた、『本質的に帝国主義間戦争』と見るべきだ」としてきた。
ところが、5月9日、米国はウクライナ戦争へのさらなる巨額軍事援助のために、「武器貸与法」に署名し、法律が成立した。
これにより、来年9月末までの間、大統領の権限でウクライナに兵器などの軍事物資を貸与する際に、本来必要な手続きが免除され、迅速な支援が可能になる。つまり、ウクライナへさらなる巨大軍事援助が行われるということだ!
この「武器貸与法」は、第2次世界大戦中の1941年3月、ナチスドイツと戦う、イギリスやソ連などを支援するために活用された歴史があり、この軍事援助によって米国は、事実上第2次大戦に参戦した(英仏露を中心として500億ドル以上を提供、連合国の勝利に貢献)

・そして、これより先、米国は、今年4月28日、ウクライナへの軍事支援などを強化するため、330億ドル(約4兆3000億円)の追加予算承認を連邦議会に求めると発表。これは「武器貸与法」の成立とともに、ウクライナへの武器援助が、際限なく巨額化することになるということだ! https://www.bbc.com/japanese/61267600
●今年2月のウクライナ戦争以降、米国によるウクライナへの軍事支援は、合わせて約38億ドル(約4900億円)であったが、この追加支援を合計すると、368億ドル(約4兆8千億円)というとてつもない巨額だ。
(ウクライナの、2021年の軍事費は約60億ドル。これはイタリアやオーストラリアを上回る、世界11位の規模。2014年のウクライナ東部戦争以来、米国の支援は、国務省によると同国に総額56ドル超の援助)
米国の軍事援助の主要な武器はー、
155ミリ榴弾砲(100門以上)と同砲弾2万5000発、対砲レーダー3基、妨害電波を発信するジャミング装置、対空ミサイル「スティンガー」1400基超、対戦車ミサイル「ジャベリン」5千基超、自爆型の戦術無人機「スイッチブレード」数百機、偵察用無人機のほか、レーザー誘導ロケットや多目的装甲車、通信システム、医薬品など。
●また、EUも、4月13日、兵器供与のため5億ユーロ(約680億円)を追加支援。2月末、EUとして初めて資金拠出することに合意したが、今回の追加拠出でウクライナ軍支援に使えるEU資金は、計15億ユーロ(約2050億円)となり、当初の3倍規模に膨らむ(独軍は、対戦車砲を1000発、携帯可能な地対空ミサイルの「スティンガー」を500発、それぞれウクライナに提供)
●ウクライナ戦争が、このように米国とロシアとの「帝国主義間戦争」へと実体的に変化してきた中ー、
私たちのこのウクライナ戦争に対する基本的スローガンは、
・ロシアの「ウクライナ侵攻弾劾」と合わせて、「米国のウクライナ戦争弾劾」を掲げなければならない。
・そして、ウクライナ戦争への停戦要求は、ロシアーウクライナだけでなく、米国へも要求せねばならない。
特に、米国は、今や唯一この戦争を止める力を持っているが、その米国は、ロシアの弱体化ー分裂化(欧州全覇権)を狙って、戦争を長期的に継続しようとしている。
●強調すべきは、再度、私たちは、このウクライナ戦争に対し、憲法第9条の平和主義思想(全ての戦争・軍隊の廃絶)を掲げて、日本だけでなく、世界へと広げるべきだ(憲法第9条をさらに「非武装実力抵抗」論――「無防備都市宣言」論へ)。
*この憲法第9条の思想と実践なしには、ウクライナ戦争→対中戦争→世界大戦は不可避である!
*日本においては、憲法第9条擁護ー非武装を主張していて、ウクライナ民衆や世界の人々には、「自衛戦争のために銃を取れ」という「平和主義」は、まったくの欺瞞である!
●追加……イラク戦争・アフガン戦争・ベトナム戦争でも、私たちは、「アメリカのイラク戦争反対」などと主張したが、「イラク国家・フセイン支持」は掲げなかった。ベトナムも同じ「アメリカのベトナム戦争反対」だけだ。
276993646_4891631547579760_2660905120308608051_n.jpg276992100_4891630840913164_5430026916357326267_n.jpg
(続いて、遡って3月21日の書き込み)

●ロシアーウクライナ戦争についての覚え書き的試論!
――反戦平和運動の混乱を止揚するために!

・この戦争の政治的性格(歴史的性格)を規定することは、今決定的に重要であり、この試みなしには、現在、世界で始まっている「新冷戦」=世界的「国家間争闘戦」(覇権争い)には対処できない。かつ、反戦運動の歴史的後退を防ぐことはできない。
以下は、私の「覚え書き的試論」である。
・この世界的危機ー戦争の始まりを、あえて、2018年のアメリカの「国家安全保障戦略(NSS)」による「対中ロ競争戦略」の開始=新冷戦の歴史的始まりからとする(2014年の東ウクライナ戦争を基点とはしない)。
・この「対中ロ競争戦略」によってアメリカは、世界的な帝国主義的争闘戦(覇権戦争)に突入した。
・これがアジア太平洋においては、日米を軸とする「対中包囲戦略」として発動され、「Quad」、「AUKUS」などの英仏豪を巻き込んだ、対中政治・軍事態勢がつくられている。
・ヨーロッパにおいては、このアメリカの対ロ競争戦略は、東西冷戦後から一貫して引き継がれてきた、東欧へのアメリカの覇権政策――NATOの東方拡大政策として強化され、これに欧州もまた巻き込まれてきた。
・ウクライナの「民族運動」(「民族解放運動」ではない)も、歴史的なロシアのウクライナ民族への抑圧政策の中で、このアメリカの東欧覇権戦略に乗っかり、それを利用して進められてきた。
・したがって、このロシアーウクライナ戦争の政治的性格は、端的にいえば、「米ロ間の帝国主義的争闘戦」(覇権争い)に、ウクライナ民族運動が巻き込まれた、「本質的に帝国主義間戦争」と見るべきだ。
・問題は、この米ロ間の「本質的に帝国主義間戦争」に、欧州と日本(そして中国も!)も巻き込まれる「世界的戦争」(新冷戦の本格的始まり)に発展しようとしていることである。
・この戦争を「専制ロシアとウクライナー民主主義国間の戦争」と規定する大きな流れがあるが、これは、第2次世界大戦の、歴史的規定の誤りにも起因する。
・第2次大戦は、独伊日対米欧の「帝国主義間戦争」にソ連が巻き込まれた世界大戦であり、アジア的には、中国ーアジア市場の争闘(覇権)を巡る、米英蘭対日本の帝国主義間争闘戦であり、これに中国の民族闘争ー「民族解放戦争」が巻き込まれたものである。
・世界と日本の歴史学説は、この戦争を「民主主義対ファシズム」の戦争として規定してきたが、これは、米英、特にアメリカの「戦争犯罪」(ヒロシマ・ナガサキ、東京大空襲などの無差別爆撃)を免罪するための主張である。
・この戦争の正確な規定は、特に、急迫するアジア太平洋戦争ーアメリカ(米日)の対中戦争(南・東シナ海戦争ー「台湾有事」)の歴史的はじまり、という事態が進行する中で、とりわけ重要である。
・繰り返すが、アメリカの2018年「国家安全保障戦略(NSS)」による「新冷戦」宣言は、アフガンーイラク戦争後の、アメリカの世界的戦争態勢作りであり、対中戦争態勢づくりである(実際上は、ウクライナ戦争が先行しただけ!)
・この事態の中、現在の反戦のスローガンは、

*「ロシアのウクライナ侵攻反対」
*「米ロの帝国主義間戦争反対」
*「アメリカのNATO東方拡大戦略反対」
*「ウクライナの中立政策支持」
*「ウクライナーロシアの即時停戦を」
*「市民の犠牲をなくすためにキエフ等の無防備都市宣言を」
となろう。
そして、「台湾有事」キャンペーンによる、日米豪(欧)の対中戦争が切迫の中、今私たちが、特に求められているのは、ウクライナ戦争に反対するとともに、日米の対中戦争態勢づくり――琉球列島へのミサイル要塞化を阻むための、沖縄島――奄美・石垣島・宮古島と連帯した、全国的たたかいである!

●参考文献『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907127282
---------
(転載おわり)
nice!(1)  コメント(1) 

nice! 1

コメント 1

H.Sato

小西眞には、ウクライナにおけるナチズムの歴史にかんする視点が抜け落ちている。単にロシアとアメリカとの代理戦争と言うだけではなくマイダン革命において、アメリカがネオナチを使って新ロ派の大統領を追い出し、送り込まれたネオナチが、ドネツク、ルガンスクの人々を攻撃してきた八年間で1400人が殺されている。
2014年にこの2つの地域は自治共和国を作りロシアへの編入を求めてきたが、この2つの地域元々工業地帯で鉱工業の労働者が多く、共産党支持者も多いため、共産党嫌いのプーチンはロシアに編入することを嫌ってきた。
2014年の時点でドネツクとルガンスクノ自治共和国(両方とも人民共和国という名称をつかっている)をクリミアと同じようにロシアに編入しておけば、14000人も殺されることはなかったと考えられる。
 このロシアVSウクライナの戦争を米ロの代理戦争という視点では本質を見誤る。その中にドネツクルガンすく両地方の独立戦争という側面も有る。
 かってスペインにおいてカ、タロニアの人民がフランンコに対する独立戦争を行い、そのときはファシズムに対する統一戦線がくまれた。
その統一戦線をスターリンは裏切ったわけであるが、今日本の左翼はこのスターリンの立場に立とうとしている。プーチンにも問題があるが、この戦いでロシアが負けるとナチズム(ネオナチズム)が世界を席巻することになる。
 この戦いは断固としてロシアを支持すべきである。
by H.Sato (2022-05-21 16:55) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント