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共産党の「4中総」決定と参院選 [社会]

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(前書き:"批判的応援"の必要性)
昨年の衆院選での野党の後退、それを受けて11月27~28日に開かれた共産党の「4中総」(→録画とテキスト)について、私の意見をメモしておきたいと思います。社民党、れいわ新選組と並んで、共産党は重要な国政政党で、しかも前2者と比べて勢力も大きいので、その役割は重要です。欧米の共産党が非常に小さいのに比べても、世界的に特異な位置にあります。そのような政党としての共産党がもっと大きくなり、影響力を強めて欲しい。いや、むしろ、迫り来る参院選を戦うには、この「4中総」のレベルでは率直に言って全く不十分 − つまり再び自民の優位を許しかねず、理論・方針と態勢の急速な「バージョンアップ」が必要だと思います。

そのような目的で、昨年の衆院選、そして中央委員会総会について議論します。過去にも共産党については何度も意見や感想をブログなどに書いてきましたが、それと重なることも多々あります。

共産党に対しては、左翼、リベラル陣営の中に、あからさまな批判を遠慮する空気が、明らかにあると思います。しかし批判を避けては、総合的な意味での応援にはならないでしょう。以下、私が気づいた限りで、「批判的応援」を試みたいと思います。(随時追記予定。以下、本文は「である調」で。)

目次(クリックで各項目にジャンプ)
1.「4中総」決定の「読了」だけでなく、追加的な総括、新機軸などの開発が必要
  緊急に選挙期間「前」の戸別訪問の取り組みを1401577.gif追記あり
2.衆院選での後退をどう総括するか
(a) 選挙だけを偏重する誤り 本格デモやストライキなど直接行動の軽視
(b)「維新」の分析が遅れた
(c) 朝鮮のミサイルに対する姿勢
(d) 世論の系統的な調査・研究・分析の必要性
(e) 衆院選の結果に対する責任論
3.「4中総」について
(a) 会議の公開性の問題—代議員同士、代議員と幹部との討議内容が分からない
(b) 志位委員長の幹部会報告について
(c) 報告にも結語にも出てこないこと
 c-1 関西生コン労組弾圧事件
 c-2 南西諸島の軍事要塞化の問題
4 付記 「しんぶん赤旗」について
付録:「報告」と「結語」からフレーズを抜き書き
 * * * * * * * * *

1.4中総決定の「読了」だけでなく、追加的な総括、新機軸などの開発が必要
4中総決定(録画とテキスト)の「読了」が党員に呼びかけられている。読み、理解することは当然の前提だが、それだけで十分ではない。4中総自体が「完全」なものとは誰も言わないだろうが、しかし私の見方では、十分に衆知を集めたものとも言えないからだ。「読了」するとともに、不十分、不完全な部分についても議論し、新しい戦術などを発案していくことなどが重要だと思う。実際、志位氏の「結語」でも、情勢の「打開のための答えをすべて持っているわけではありません」と率直に表明されてもいる。

まず緊急に、新しい戦術として、選挙期間「前」の戸別訪問をぜひ取り組むことを提案したい。しんぶん赤旗2021年12月24日付けのチリ大統領選左翼勝利のニュースで、「左派逆転ドラマ」の背景に126万軒の個別訪問があったことを報じている。日本では選挙期間中は戸別訪問が禁じられているが、それ以外は自由であり、むしろ年中のほとんどがそのような期間だと言ってよい。(この可能性を2014年3月のフェイスブックに投稿[注1])
1401577.gif1/22追記: これは単に一方的な宣伝・説得というだけでなく、もし対話にまで発展させられれば、人々が何をどのように考えているか、何に関心があるかを知ることができ、それは次の宣伝活動に生かすことができる。

2.衆院選での後退をどう総括するか
まず、衆院選については、直後にブログに書いたことも含め[注2]、いくつか挙げてみる。
(a)選挙だけを偏重する誤りがあると思う。これは斎藤幸平氏が「人新世の資本論」の中で指摘しているとおりである[注3]。圧倒的なマスメディアの影響力の元では、政党の政策を浸透させることや、真の政治的アジェンダに多くの人の目を向けさせることは、単に選挙時の宣伝活動だけでは出来ない。ストライキやデモなどで、いわば無理やりメディアに報道させるイベントが必要で、また、行動する労働者や市民の間でアジェンダを共有し、互いにエンパワーすることで力も生まれる。

(b)維新がいわば「自民の変異株」として、この国の「真の支配層」に認められ、意図的にメディアに露出させるという謀略が数年前から作動しているということは明白だったのに、それに対する系統的な対策は皆無だったこと。

(c)朝鮮(DPRK、以下、北朝鮮)のミサイル問題への共産党の対応で、自民党などとの「差別化」がないのは相変わらずである。2021年10月19日の志位談話「北朝鮮による弾道ミサイル発射に抗議する」では、「これなら自民党でいいじゃないか?」と思わせるだけだろう。少なくとも、その2ヶ月前の8月にアメリカがやった、北朝鮮より「本格的な」実験[注4]にも触れるべきだっただろう。

(d)人々の政治的思考のパターン(「無関心」も含めて)の系統的な調査・研究・分析がなされていないと思う。このデータを前提にしないと効果的な政治宣伝はできない。

(e)衆院選の直後に議席減に対する委員長の責任論が出たことに対して、志位委員長は「政治責任を取らなければならないのは間違った政治方針を取った場合だ」としてこれを否定した[注5]。しかし政党の指導者が責任を負うのは「政治方針」だけではなく、戦略・戦術を含めた指導能力も含まれると考えるのが普通だ。会社で言えば営業成績だ。そのような一般的な感覚からあまりにも離れた認識と言わなければならない。実際、志位氏自身、「幹部会報告」では「結果に結び付けることができなかったことについて、常任幹部会として責任を痛感」と述べてもいる。また、別項でも挙げるが、過去に野党共闘を拒否し、あるいは消極的であったことは、文字通り「政治方針」を間違えたことに当たるだろう。

3.「4中総」[注6]について
その中の「志位報告」と「結語」についていくつかコメントしたい。(と言っても、この会議の発表文書はこの志位氏の発言だけ。)これらの内容については、「報告」は2万6千字を超えるなどいずれも長大で、要約するのも困難なので、末尾に項目や目立ったフレーズをまとめたものを添付する。

(a) 代議員同士、代議員と幹部との討議内容が分からない
まず、いつものことだが、会議の公開性が相変わらず低い。代議員の発言は直接知ることができず、わずかに志位委員長による「間接話法」によるものだけである。どのような議論が戦わされたのかは出席者しか分からない。いわば「秘密会」である。全面公開とは言わないが、政策や運動の進め方などの議論は公開されるべきだろう。人事の不透明性と並んで、会議の閉鎖性は、一般国民の目には、不思議で異様な団体に映るだろう。中国などの独裁的な国の党のイメージと重ねる人もいるかも知れない。そのような党に国民が親近感を持つことは期待できない。もちろん支持率を二桁に上げることも困難だろう。このようなことを、党幹部や代議員は全く想像しないのだろうか。

(b) 志位委員長の幹部会報告について
総選挙の総括では、「野党共闘で政権交代を」という最初のチャレンジとして歴史的意義を強調している。最後の一週間に共産党の勢いの失速が起きた、「支配勢力の必死の攻撃に対して、それを上回る必死さで反撃する点で弱点があった」、早い段階でも勢いを作れなかった、と述べている。要するに、戦略・戦術についての分析は見つけられず、ただ「頑張りが足りなかった」としか言っていないように思える。

野党共闘を評価し今後も発展させるという方針、それにはもちろん大賛成だが、一方で、過去にこれに背を向けたことへの反省は、これまでも一貫して見られない。今回、「市民連合」の役割を高く評価しているが、2006年に同様の、野党共闘を求める運動に対して、「市民運動による無原則的な政党への介入」と口を極めて非難し、否定した[注7]。その時は野党共闘はダメで、現在は可という判断の違いについて、これまで共産党の側の説明を聞いたことがない。私には大差ないように思える。さらに、もしその時点で野党共闘の努力が追求されていたら、その後の十数年に及ぶこの国の政治の劣化も相当程度食い止められたかも知れず、安倍の登場を許さなかったかも知れないとも思う。

総括がないという点では、原発問題も同様。「脱原発」派を「科学の進歩を否定するもの」と批判した過去がある。原水禁運動の分裂の原因についても総括がないのは同様である。(原水禁運動の分裂問題の私なりの総括は「日本の科学者」2020年4月号に掲載の文章を参照下さい。[注8])

(c) 報告にも結語にも出てこないこと
c-1関西生コン労組弾圧事件
労働組合「関西生コン」の通常の組合運動や争議行為に対して、2018年8月から大阪府警・滋賀県警・京都府警による組合員の大量逮捕・起訴という事件が起きている。「1960年の三井三池争議や86年の国労への攻撃にも匹敵する事件」[注9]とも言われるこの件に今回の総会で触れなければならないというわけではないが、しんぶん赤旗や党幹部がこれに言及したことは全くないのではないか。社会新報や岩波「世界」は数年前から詳しく取り上げているが、共産党の無関心が目立つ。

これは、単に労働事件への無関心の問題にとどまらず、社会運動、労働運動への党の姿勢に関わるもので、ひいては選挙にも大きく影響する。2(1)の項で述べたように、大衆行動、直接行動を等閑視し、選挙だけを偏重するという誤りにつながるからである。

c-2 南西諸島の軍事要塞化の問題
南西諸島(琉球弧)の自衛隊新基地建設による軍事要塞化問題の位置付けが弱い。それどころか、報告でも結語でも全く触れられていない。焦点となっている奄美大島、馬毛島、宮古島、与那国島、石垣島の地名も全く出てこない。辺野古の新基地建設問題も重要であり、当然強調されているが、差し迫った戦争につながるリスクという意味では、辺野古より格段に重要である。

これらと密接に関連する尖閣問題では、「日本の領有権」を一面的に強調し、1972年の日中共同声明の際の尖閣諸島問題の「棚あげ」合意には全く触れられることがない。このような共産党の姿勢を、弁護士の内田雅敏氏は「領土ナショナリズムの陥穽にはまってはならない」という題の論説で批判している(東愛知新聞、2020年12月28日[注10])。バランスを欠くという点では、2の(3)で述べた北朝鮮のミサイル問題への共産党の対応とも共通する。

4 付記 「しんぶん赤旗」について
「しんぶん赤旗」の減紙が指摘されている[注11]。政権からの独立性という点では一般紙とは比べ物にならず、十分に魅力的な新聞であるが、このメディアをさらに一般に拡大しやすくするためには、情報の幅をもっと広げることが重要だと思う。例えば、ベストセラー「人新世の『資本論』」とその著者・斎藤幸平氏を全く無視する、関西生コン組合弾圧事件を全く取り上げない、あるいは、市民の非暴力行動を冷視する(例えば山城博治氏の逮捕と保釈についての報道[注12])と言ったことは奇妙で、「偏向」というべきだろう。原水協に対しては少し変わったが、依然として偏狭さは拭えない。編集部とは独立した、紙面の評価などを行う委員会を作ったらどうか。
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1 選挙時以外の戸別訪問 2014年3月のフェイスブック投稿
https://www.facebook.com/kouichi.toyoshima/posts/498367430269011
2 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2021-11-05
3 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2021-09-14#p213
4 https://www.vandenberg.spaceforce.mil/News/Article-Display/Article/2727025/unarmed-minuteman-iii-test-launch-from-vandenberg/fbclid/IwAR11qaTQuXfiItluRRul403qnSGH43376q2NOiFCD_fpyLtDhjnOmc59HBw/
5 例えば毎日の11月1日の報道
 https://mainichi.jp/articles/20211101/k00/00m/010/350000c
6 公開の文書はこちら。 https://www.jcp.or.jp/web_jcp/2021/11/2021-4chuso.html
7 「参院選での『平和共同候補』を求める運動について」、2006年5月20日(土)、しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-05-20/2006052025_01_0.html
これへの当ブロガーの批判
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2006-06-14
この数ヶ月前には、新社会党からの共闘の申し入れに拒否回答をしている。
「『政党間共闘の条件は存在しない』共産党が新社会党の申し入れに回答」、2006年1月7日(土)、しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-01-07/2006010704_03_0.html
これへの批判 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2006-01-07
8 ブログに転載。https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2020-04-25
9 永嶋靖久弁護士の発言。社会新報2019/7/26付け。次に引用。
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2019-07-30#nagashima
10 ブログに転載。https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2021-02-27
11 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2022-01-08/2022010808_01_0.html
12 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2017-03-19
13 この言葉の説明がない。初出はこれか?2013年6月28日、都議選の経験。
 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-28/2013062806_01_0.html

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以下、「報告」と「結語」からフレーズを抜き書き(一部、筆者の書き込みあり)
志位報告
総選挙の総括と教訓 と 参議院選挙の勝利・躍進にむけて の2部からなる。
総括
「野党共闘で政権交代を」――最初のチャレンジとして歴史的意義
「野党共闘と日本共産党が、支配勢力を攻め込み、追い詰めるなかで、相手も必死の反撃で応える――"政治対決の弁証法"の角度から」とらえること
市民と野党の共闘がかちとった重要な成果
自公と補完勢力による激しい共闘攻撃に対して、野党が力をあわせて、共同の反撃の論陣を張るまでには至らなかったことは、大きな弱点
共闘態勢の構築が選挙間際まで遅れた
暮らしの問題、平和の問題とともに、気候危機打開、ジェンダー平等という世界と日本の新しい大問題を、選挙戦の大きな争点に位置づけて訴えぬいたことが、これらの問題を総選挙の大争点に押し上げた
支配勢力の「必死の攻撃に対して、それを上回る必死さで反撃する点で弱点」
積極的支持者を増やす活動をいかに強めるかが、今後の大きな課題
根本には、党の自力の問題があります。とくに世代的継承のとりくみで本格的な前進がつくれていない

参議院にむけて
「安倍支配」を受け入れることが岸田政権の存在条件でありながら、国民に向けては、安倍・菅政治との「違い」をアピールしなければならない。ここに岸田政権の大きな矛盾がある。
あらゆる分野で、草の根から要求運動を発展させ、岸田政権を包囲
もともと市民と野党の共闘は、2014年から15年にかけての安保法制反対の新しい市民的・国民的たたかいの高まりを最大のエネルギーとして生まれた
4つの課題:(1)国民の苦難軽減という立党の原点に立って、命と暮らしを守る (2)憲法破壊のくわだてを止める (3)気候危機打開のための国民的な運動を起こす (4)ジェンダー平等
(しかし2は具体的には)「憲法改悪を許さない 全国署名」のみ?

参院選向け作戦:3月末までに、すべての都道府県で「参院選躍進・第1次全国遊説」にとりくむ
3月末までに「参院選躍進・第1次折り入って作戦[注13]」にとりくむ(主に電話による要請のよう)
公示日までに1500万の対話、1000万の支持拡大をやりぬき、「650万票、10%以上」(疑問 10%は支持率のことか?)
綱領を語り広げる絶好のチャンス
世代的継承のとりくみを中軸にすえ、党員拡大
中間地方選挙で反転攻勢に

結語
「幹部会報告は・・・たいへん率直な討論によって深められた」
"政治対決の弁証法"の観点を再度強調。総選挙での後退は「一断面」。それはそうに違いないが、言い訳にも聞こえる。
情勢の「打開のための答えをすべて持っているわけではありません」と率直に述べられている。
気候危機、ジェンダーなどの分野で、これまで全く接点のなかった広い方々に期待と支持が広がる

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