SSブログ

「医療崩壊を防ぐための世界標準のコロナ戦略」 [社会]

あるメーリングリストで、俞 炳匡(ユウ・ヘイキヨウ、 Byung-Kwang YOO)という研究者の発信を知りました。昨年11月と半年も前ですが、コロナ封じ込め戦略として全く妥当な提案で、これが実施されていれば第三波も防げたかも知れません。よく言われるPCR検査拡大も含まれますが、それだけでなく総合的な方策が書かれています。

昨日の政府と専門家の間のやり取りを、「専門家会議が政府に反逆した、意地を見せた」的に描く報道がありますが、相変わらず飲食店などに集中した「人流抑制」ばかりで、経済と生活を痛めつける割には効果は限られています。自殺者の増加の報には本当に心が痛みます。氏のようなまともな専門家こそ対策立案の要に置かれるべきでしょう。専門家会議の再編こそ対策の第一歩です。

同氏のブログ、2020年11月30日の記事「医療崩壊を防ぐための、世界標準のコロナ戦略:3次の防衛ラインが必要」を以下にそのまま転載します。
私のTwitterアカウントに、以下の内容をスレッド(15連続ツイート)で掲載しました(https://twitter.com/bk_yoo;2020年11月21日19:59)。このスレッドを、一つのエッセイの形として、ブログにも掲載します。

1/15)タイトル「医療崩壊を防ぐための、世界標準のコロナ戦略:3次の防衛ラインが必要」。残念ながら、北海道で医療崩壊が始まりました。今後の医療崩壊を防ぐために、世界標準のコロナ対策を「3つの防衛ライン」として説明します。この戦略の大前提は、「主戦場」が病院「外」であることです。

2/15)この戦略下では、1次防衛ラインが、無症状者も対象者として含む、大規模な社会的PCR検査です。PCR検査能力が低い場合は、感染リスクの高い無症状者(医療従事者を含むエッセンシャル・ワーカー)を優先します。2次防衛ラインは、無症状・軽症の感染者を隔離する施設です。

3/15)最後の3次防衛ラインが医療機関です。3次ラインの前方が診療所で、最後尾が大学病院です。上記の様に、主戦場は病院外であり、最も重要なラインは1次防衛ラインです。世界各国は、過去一貫して最重要の1次防衛ラインを強化して来ました。しかし、日本の1次防衛ラインは極めて貧弱なままです。

4/15)1次ラインが貧弱である結果、2次防衛ラインも連動して貧弱になります。11月21日現在、人口当たりの検査数は世界153位で、以前から改善の兆しもありません。PCR検査能力は他の先進国の10分の1以下です。検査数が少なければ、見逃す感染者が多く、隔離施設も少ないまま。https://www.worldometers.info/coronavirus/

5/15)少な過ぎる隔離施設は、2次防衛ラインの2つ機能を果たしていません。すなわち、1つめの機能として、3次ラインに多数の患者が来ることを、予防できていない。2つめの機能として、感染レベルの変化を検出する指標として、隔離施設の使用率が使えない。従って、現状の2次防衛ラインはハリボテ同然。

6/15)現在の日本は、3次防衛ラインの診療所で、検査で陽性かつ軽症なら、2次ラインの隔離施設に入ってもらうだけです。隔離施設の数が増えず、使用率も上がる訳がありません。11月11日付の、全国の宿泊療養施設居室使用率は、北海道(43%)を除き20%以下、39府県が10%未満。https://www.stopcovid19.jp/mhlw-beds.html

7/15)留意すべきは、3次防衛ラインの最後尾にある大学病院にコロナ患者が押し寄せた時点で、コロナ対策として、明らかな「敗北」であることです。この時点で、他の病院は、ほぼ満床で「後がない」からです。満床の病院は、入院が必要な患者さんにとって、「難攻不落の要塞」か「存在しない」に近い。

8/15)ハイテク設備を持つ病院で、いくら臨床医が英雄的に働いても、限られた病床に入った患者しか救えません。満床(医療崩壊)故に入院できない患者は、19世紀同様、自宅で祈るしかありません。院内クラスターが発生すれば、空き病床があっても入院できない故に、「敗北」は意外過ぎる程早く来ます。

9/15)そもそも、ハイテク施設を持つ病院、特に大学病院は、患者数の少ない難病を対象としています。人工呼吸器を装着すれば延命が可能な、大量のコロナ患者は、発生を1次・2次防衛ラインで予防する方が、費用対効果も遥かに優れています。しかし2月以来、日本では1次・2次防衛ラインは貧弱なまま。

10/15)最重要の1次防衛ラインを守る際に、参照すべき指標は、日ごとの全検査数に占める陽性者の割合(陽性率)です。この陽性率には、2、5、8%という3つの基準値があり、8%を超えると最も深刻な、検査数の不足と感染の拡大を意味します。基準は米加州公衆衛生局のものです。https://www.cdph.ca.gov/Programs/CID/DCDC/Pages/COVID-19/COVID19CountyMonitoringOverview.aspx

11/15)現在感染が拡大している都道府県では、陽性率が最悪レベルの8%を超えており、1次防衛ラインが決壊したことを示しています。一旦、1次防衛ラインが破られると、ハリボテの2次防衛ラインを飛び越え、3次防衛ラインの病院で病床が一気に埋まってしまいます。この例を北海道で見てみましょう。

12/15)北海道では、11月11日の時点で入院・重症患者病床使用率は24%・6%。11月12日に「あと1週間続けば医療崩壊」と北海道・札幌市医師会が緊急会見。11月20日に、旭川市で医療崩壊。私の計算では、1次ライン決壊(陽性率の8%超え)は11月2日。その後わずか3週間以内で、最後の3次防衛ラインが崩壊。

13/15)上述の様に、最重要の1次防衛ラインを守る際に、参照すべき指標は陽性率です。陽性率が2%が超えた時点で、PCR検査を拡大して、2%以下を目指すべきでした。更に、5%を超えた時点で、PCR検査の一層の拡大と隔離施設を増大を通じて、8%という崩壊ラインに近づけない努力を、行政がすべきでした。

14/15)繰り返しますが、世界標準のコロナ対策の大前提では、主戦場が病院「外」です。この前提は、伊のVeneto州が、対策の主戦場を病院外にした事で、同国内の他の州(病院内を主戦場にした)より、早期にコロナ収束に成功した実例(2020年春;文献添付)に基づきます。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7253944/pdf/main.pdf

15/15)説明上分かり易いので、防衛ラインという用語を使いました。この場合、コロナ・ウイルスは敵ですが、「コロナ感染者は敵ではなく、明日は我が身の『被害者』」であることに留意して下さい。コロナ終息まで、先は長そうです。今からでも1次防衛ラインの強化、すなわちPCR検査を拡大すべきです。
(転載終わり)

このブログの筆者について、ブログでは自己紹介がないので検索してみると、東大アイソトープ総合センターに同氏の書かれた文書が見つかり、それによると神奈川県立保健福祉大学教授(医療経済学)ということです(昨年7月)。同大のウェブサイトでも確認できました。

未だにPCR検査の体制がいかにいい加減か、私の地元、久留米市(最近、人口当たり感染者で全国トップを記録)のデータを見てみましょう。5月5日の例です。
http://www.city.kurume.fukuoka.jp/1070kenkou/2040hokeneisei/3005cov2019/4305patient/2021-0503-1659-8.html
陽性者34名中無症状は8名、うち4名は濃厚接触者(症状調査中1)となっています。
陽性者中無症状は24%(症状調査中の1名を除いて計算)、無症状のうち濃厚接触者4名を除外すると12%に過ぎません。感染者のうち無症状が半数ほどと言われていますが、検査がほぼ症状がある人だけにしか行われていないことが分かります。だいぶ前に市のウェブ経由で市長に意見を提出しましたが、反応はありません。

こんな当たり前のことがなぜ1年以上経っても実行されないのか、深い謎です。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント