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「やみくもな検査」で感染拡大を抑える -- 神戸大の牧野淳一郎氏の発信 [仕事とその周辺]

1/10追記:この線に沿った具体的な提案など、岩波「科学」掲載予定の3本の文章が出版前に無料公開
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東京をはじめ,国内の感染状況はいよいよ重大になって来ている.再ロックダウンという話も言われる.しかし希望の持てる計算,見積もりがある.

「やみくもな検査」でも,その規模次第では感染を収束させられると言うことを神戸大の牧野淳一郎氏がツイッターと,そこからリンクされたウェブサイトで発信している.
https://twitter.com/jun_makino/status/1344546864297697281
http://jun-makino.sakura.ne.jp/articles/corona/note009.html

大量に検査(PCR検査,抗原検査)を実施し,感染者を隔離することで,感染拡大にブレーキをかけるという当たり前の,常識的なことだが,その現実性,実行可能性を,費用も含めて定量的に見積もっている.

要点を簡単にまとめると以下の通り.(引用が殆どだが,記法を変えたり,筆者の雑音も少し挿入)

集団の中の感染者の変化は“SIRモデル”と呼ばれる方程式で扱われる.以下は専門外のにわか勉強によるまとめである.
SはSusceptible(未感染者),IはInfected(感染者),RはRecovered (回復者)を表し,それぞれの人数の時間変化は次のような方程式に従うとされる.(数式表記の慣例により数量を表す文字はイタリック体.左辺は微分記号.)

dI/dt = βSI − γI,
dR/dtI
S + I + R = N (全人口)

β(ベータ)は感染が広がる速さの係数(一人が 1 日にうつす人数の期待値を人口Nで割ったもの.他の定義もあるので紛らわしい),γ(ガンマ)は感染者が1日あたり回復する確率(回復率.回復までの日数の逆数).
基本再生産数(1人の感染者が次に平均で何人にうつすかを示す数値)は
R0 = Nβ/γ
これを1以下にすれば感染は収束に向かうことになる.

つまり,検査で隔離すれば,回復者数Rと同じに扱っていいので,この式の分母にあるγ(回復率)を検査・隔離で大きくできるということだ.そうすればR0を下げられる.

牧野氏は東京都を対象に,例えば全員を月一回(30日ごと,つまり毎日30万人)検査する場合を計算している.この場合1日1人当たりあたりその逆数,つまり1/30の確率で「回復」させることになる.全体の「回復率」は自然の回復の確率γとの和になりγ' =γ+ 1/30,つまり1/γ'= (1/γ) ×{30/(30+1/γ)}.現在,γは1/7程度(つまり平均7日で回復)とされているので,30/37=0.81.つまり再生産数を2割弱下げられることになる.

ことための費用も見積もられていて,安価なスマートアンプで1日6億円,プール方式なら1億円を切る.1年やっても400億.

検査を7日毎にすれば,例えば1.2だったR0が半分の0.6 まで下がり,1ヶ月で新規感染者を 1/8にできる(もちろん費用は4倍になるが).わずかに感度が低いが安価でスピーティーな抗原検査でも,この議論に大差はない.

ロックダウンで人々の生活に,特に苦境にある人に決定的なダメージを(もちろん経済全体にも)与えることに比べれば,とても安上がりではないか.もちろん「アベノマスク」の費用に比べても.

追記:大規模PCR検査については,4月にもWHO上級顧問・渋谷健司氏の全国民にPCR検査をという提言をブログで紹介しました.
全国民にPCR検査を--渋谷教授が提言
そのころに比べて,PCR検査の費用もフィージビリティーも今ははるかに有利です.

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