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会議における責任回避の典型パターンをNHKニュースが提示 [社会]

コロナ感染拡大は本当に憂慮すべき状況にある.この時期に旅行を推奨してウイルスの拡散を図るなど,政府から国民に対するバイオテロともいうべき事態だ.問題は,専門家や,政府の会議に招かれて発言の機会を与えられた人たちの無責任ぶり,臆病ぶりだ.そしてメディアの・・・.

sawata200731.jpg次のような尾身部会長の発言には,岡田教授でなくても,素人でも驚愕するだろう.「指数関数」がどういうものか,この医者は知らないのだろうか?(右の画像クリックでツイートへ)
澤田愛子 @aiko33151709
今日の報道19:30。出演した岡田教授が「尾身先生の発言に驚愕しました。非常事態宣言を感染爆発段階の直前に出したらいいとおっしゃったが、それじゃもう間に合わない。そのもう1段前に出すべきです。科学者は真実と思ったことを言うべきでマイノリティーとして叩かれても真実を言った方がいい」と。
9:37 PM · Jul 31, 2020·Twitter Web App
さて昨夜(7/31)のNHK「ニュースウオッチ9」では,この国で上から下まで,国家レベルのマクロから町内会的なミクロまで*,普遍的に見られる責任回避の典型パターンを,見事に切り取っていた.専門家会議での会議メンバー・小林慶一郎氏と,それに「諮問」した西村経産大臣の言葉である.さわりの部分を切り取ってみる(末尾に全部の書き起こし).
(* 「ミクロ」の例として,PTAの会議に関して,「PTAの本当の会議は帰りの下駄箱から始まる」という言葉を聞いたことがあります.ネット検索すると類似のフレーズが見つかります.例1例2.この小林氏の場合は「下駄箱」ではなくTVインタビューの場で,となるでしょう.)
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ナレーション:しかし政府が示した方針を覆すのは現実的ではなかったと振り返ります。

小林:先に政府が方針を発表しているものを覆すということはあってもいいんだと思いますけど、政治的ないろんな影響力、影響も考えると、なかなかそこまで自分が全部リスクを取って発言するというところまでは行けなかったなーっていう感じですかね。
分科会の結論というのは、事前にもう決められていたというその枠の中で話をさせられたっていう、そういう印象が強いですね。
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Q:分科会のメンバーに聞きました。先のGo to トラベルの件では、会の直前にその議題として降りてきて、すでにその時にはやること先にありきだったと、議論を尽くす状況にはなかったと、順序が逆だったんではないかと。

西村経産大臣:分科会にですね、東京を対象外とするという形で、案を提示させていただいたわけです。これは、何もなしで、議論もやっぱりやりにくいだろうということで提示をさせて頂いて、そこで私は、あのう、かなりの議論があったと思いますし、その結果として、東京を除外するということについては認める。ご議論を頂いた結果ですね、当然それはダメだとか、修正されるとか、ありうるわけですので、これからも率直なご意見を頂ければと、そういうふうに思っています。
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つまり,会議の一出席者は,自分は違う意見を持っていたが,「結論は事前に決められていた」と言い,一方,諮問した側は,「案がなければ議論もしにくいだろうから提示したのであって,当然修正はありうる」と言っている.会議が出した結論に対してお互いに責任を回避しあっている.形式的には後者に分があろうが,いわゆる「場の空気」に支配されるこの社会の習性を前提にしていたとすれば,このように一方的にも決められない.

問題は,そこでなぜきちんと採決をしなかったのかということだ.このような,曖昧な全会一致というのはあらゆるところで見られる.それを「和」とか「民主主義」と履き違えているようだ.これは一人ひとりの責任意識を曖昧にし,集団の中に溶解させるということだ.ようするに個人の責任の回避である.

このような,異論があるにも関わらず採決を取らないというのは,かつての職場の教授会でもよく見られた.しかし,あえて採決を要求し,予想に反して執行部提案が否定されるという事象もあった.
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2006-07-23#incident

上で小林氏は「自分が全部リスクを取って発言するというところまでは行けなかった」というが,一体その「リスク」とは,キャンペーンを進めて全国にウイルスをばらまくというリスクに比べればどれほどのものなのか?

(2日朝追記)
このクリップ(ニュースの一コマ)の中で指摘したい点が他に2つある.まず,PCR検査拡大に「慎重な」,つまり反対する人が専門家会議にいるということだ(このくだり).詭弁でしかないが,呆れる他ない.各自治体で(世田谷区に倣って)検査の桁数を上げていくことで圧倒するのが重要だろう.
もう一点は,有馬キャスターの西村大臣に対する追及の甘さである.「ブレーキを踏むべきかアクセルを踏むべきか政府はどっちを推奨してるのかわからない」という質問に,西村大臣はいわゆる「信号無視話法」を使い,全く答えていない.しかしそれを放置している.とてもジャーナリストの役割を果たしているとは思えない.(追記終わり)

以下,ニュースウオッチ9のこのくだりの書き起こしです.コロナ「第一波」,現場の証言の記事と同じく,自動書き起こしサイトを利用しました.

N:ナレーション, C:キャスター(有馬嘉男氏)

N:なぜ議論が深まらないのか。もう一人話を聞きたい人がいました。経済学者として分科会に加わった小林慶一郎さんです。

C:小林さんはどういう意見だったんですか。そしてどう評価されているんですか。

小林:私はその感染症が収まった後にああいう需要喚起の政策をやるのは、それは悪いことではないと思ってましたけれども、感染の拡大期にGo to キャンペーンやるというのは、そもそもの発想から違ってたわけなので、早く方針転換をやるべきだったという風に個人的には思います。

N:しかし政府が示した方針を覆すのは現実的ではなかったと振り返ります。

nw9-200731.jpg小林:先に政府が方針を発表しているものを覆すということはあってもいいんだと思いますけど、政治的ないろんな影響力、影響も考えると、なかなかそこまで自分が全部リスクを取って発言するというところまでは行けなかったなーっていう感じですかね。
分科会の結論というのは、事前にもう決められていたというその枠の中で話をさせられたっていう、そういう印象が強いですね。

C:もう一つ確かめたかったのは小林さんが以前から主張してきた PCR 検査などの拡充についてです。
検査を、思い切って拡大拡充することがその経済再生再開の近道であるというふうにおっしゃっているんですけど、どうもそういう議論が進んでいるように見受けられなくて。

小林:遅々として進んでいるっていう、そういう感じなんですね。非常にゆっくりゆっくり進んでるというのが私の実感。

C:小林さんは、経済を動かしていくためには検査件数を増やし、陽性者をいち早く隔離することが不可欠だと訴えてきました。しかし膨大な数の検査を行うことに慎重な感染症の専門家との間で意見が異なっているといいます。小林さんはこの状況を打破しなければ、経済はさらに深刻な状況に陥ると考えています。

小林:日本の中小企業は、もう蓄えが食いつぶした状態で8月に入っていくと。8月以降にもし緊急事態ということになるとかなり深刻に、・・あの、倒産や失業という問題が出てくるだろうと。
政治家が何らかの主体的な判断をするということがおそらくきっかけになるだろうと。もし変わるとすればそこにかけるしかないなという気はしていますね。

N:こうした声をどう受け止めるのか。今夜西村大臣に問いました。

C:大臣、大変厳しい状況になりました。Go to キャンペーンについても、今の形で継続するということですけれども、西村大臣、その考えに変わりはありませんか。

nisimura.jpg西村大臣:Go to キャンペーンとかイベントについては、これは感染状況がいろいろ動きますので、私自身はもう毎日、専門家の皆さんと、まあ1時間、1時間半と、感染状況についてやり取りをしてますので、情報状況を共有しておりますので、適切に判断して行きたいと。

C:分科会のメンバーに聞きました。先のGo to トラベルの件では、会の直前にその議題として降りてきて、すでにその時にはやること先にありきだったと、議論を尽くす状況にはなかったと、順序が逆だったんではないかと。

西村大臣:分科会にですね、東京を対象外とするという形で、案を提示させていただいたわけです。これは、何もなしで、議論もやっぱりやりにくいだろうということで提示をさせて頂いて、そこで私は、あのう、かなりの議論があったと思いますし、その結果として、東京を除外するということについては認める。ご議論を頂いた結果ですね、当然それはダメだとか、修正されるとか、ありうるわけですので、これからも率直なご意見を頂ければと、そういうふうに思っています。

C:PCR検査の充実についてです。政治のスピード、政治の決断力というのが足りないのではないかというと言い過ぎですか。

西村大臣:えーっとですね、PCR検査については、もう広げていく、拡充していくことはもう間違いがございません。その時に、どの範囲でやっていくか、一定の程度は進んできていると思うんです。ただそのスピードが期待に応えられているかどうかというところですね。さらにこれ、我々加速して進めていかなければならないと。

C:国民の間に、ブレーキを今、踏んでいいのか、その、アクセルを踏んでいいのか、政府は今どっちを推奨してるのかわからないという戸惑いの声がなお聞かれるのは、大臣、なぜなんでしょうか。

西村大臣:本当に難しい局面だと思います。私も日々悩みながら対応してますけれども、でも、大事なことはただ一つなんです。感染防止策をお一人おひとりが、そして事業者のお一人おひとりが徹底をしてもらって、やっぱり基本はマスク、消毒、そして三密を回避する、避けるということ。大声を出さないこと、事業者の皆様はガイドラインを徹底、これをやって行きながら経済社会活動をやっていく、両立をはかるという事が何より大事だという風に思います。

N:西村大臣はその時その時、専門家の意見を受け止めて対策を考えていく、進めていくと強調していました。であれば、専門家の皆さんには、それぞれの意見やアイデアで、とことん議論を尽くしてほしいと思います。そしてその議論のプロセスや判断の根拠が詳らかにされることが、私たちの安心につながると考えます。
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