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爆発的拡大=指数関数の怖さ [仕事とその周辺]

末尾に「対数目盛り」の簡単な説明を付けました.
1401577.gif4/12追記:西浦,大橋,佐藤の3氏の計算を比較した神戸大・牧野淳一郎氏の文書
  これを紹介する本人の4/11夜のツイート
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昨日(3/25)の東京都・小池知事の「緊急」記者会見で,爆発的感染拡大(オーバーシュート)や地理的封鎖への言及があり,少しは危機感も高まったかも知れないが,相変わらずNHKなどは,もはや「オワコン」のはずのオリンピックの話をニュースで延々とやっている.今日(26日)昼の「バイキング」(フジテレビ)はかなり危機の本質に迫る問題提起も多かったが,感染拡大のグラフは「爆発的」という言葉について間違った,つまり過小評価を人々に与えかねないものだった.
biking-t.jpggraph+.jpg

右側の方でグラフが急上昇になってはいるが,直線で引いてしまっているのが大問題だ.「曲がり」こそ本質的なのだ.つまり,指数関数の怖さを知ってもらいたいと思ってこの記事を書いている.私は感染症や数理統計の専門家でもないので,説得力は持たないかも知れないが,流行初期の拡大の仕方は単純な数学モデルで表せ,数式は核分裂連鎖反応(原子炉の暴走,核爆弾)と全く同じだ.つまり指数関数的な増大を示す.この「関数」がどれほど「恐ろしい」ものか,多くの人が理解しているだろうか.

overshoot.jpg前の23日の記事で専門家会議の文書から図を引用したが,最初の方はフラットな線になっているが,実はこの間も着実な(一定の比率の)増加が起こっていて,急激な増加はそれが「目立つ」ようになっただけだ.これは,縦軸を「対数目盛り」にすることでわかる.

単純な指数的増加をグラフにしてみる.これは,専門家会議が採用した「基本再生産数」2.5を採用し,「世代間隔」を5日としたものだ.後者は専門家会議の文書では明示していないが,これだと報告とつじつまが合う.もちろん人口の有限さから頭打ちになるが,初期の立ち上がりだけを見るには無視してよい.
overshoot1-daily.jpgovershoot1-daily-log.jpg
  (縦軸は人数,横軸は日数)
時刻0で1人の感染者から始まって,横軸の日数経った時に,その1日に新たに何人の感染者が発生するかを表している.左が縦軸が通常目盛りで,最初の1ヶ月ほどはまるで足踏みしているかのように見えるが,右の「対数目盛り」のグラフにすると,1日1日着実に「急拡大」していることがわかる.これがある密度を越えるとお手上げになってしまう.

同じく,感染者の累積.
overshoot1-cummulative.jpgovershoot1-cummulative-log.jpg

これはあくまでも「一人の感染者」からスタートした場合で,現在は確認されただけで国内は1,000人超,おそらく1万人近くすでに感染していると想定しなければならないので,縦軸にはその倍率をかけなければならない.その場合は図の右の方では飽和が起きるので,この単純な計算ではダメで,専門家会議の図6のようになる.

もちろんこのグラフは全くの無策だった場合で,今まででもある程度の対策は打たれている.問題はウイルスとの競争に勝てるかどうかということだ.23日の記事で書いたように,爆発的感染拡大が起こってしまえば現状では人工呼吸器が全く足りない.国内メーカーも限られているようだ.外出制限などの徹底とともに,人工呼吸器の増産が,類似業界の転換生産も含めて,急務ではないか.

(参考)
https://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/54-2-461.pdf
感染症流行の予測:感染症数理モデルにおける定量的課題
西浦 博・稲葉 寿
(受付 2006年1月4日;改訂 2006年2月6日)

I ; 感染者数 ,t ; 時刻 として,感染初期では
dI(t) / dt = (β−γ) I(t).
(βは感染率,γ は回復率や隔離率)
この解は高校の数Ⅲまたは大学初年の数学で出てくるように
I(t) ≈ I(0)exp{(β−γ) t }
となる.
(この論文のファーストオーサー西浦博氏は,上で引用した専門家会議報告書の図6を作った西浦氏と同一人物と思われる.)
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次に,多くの方が馴染みが薄いと思われる「対数目盛り」の簡単な説明を続けます.

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「対数目盛り」の簡単な説明(質問があったので付けました)
普通の目盛り(リニア目盛り)は,あらためて説明するまでもないでしょうが,目盛りの間隔を数値の「差」が等しいように取ります.例えば,0,10,20,30・・・という具合に,つまりこの例では差が10ごとに目盛りを打ちます.

対数目盛りでは,目盛りの間隔を数値の「比」が等しいように取ります.例えば10,100,1000,・・・という具合.このように,ふつう比が10になるごとに,つまり10倍ごとに目盛りを打ちます.

対数目盛りのメリットは,数値が小さい値から大きい値まで幅広く変化するときに,小さいところは拡大して,大きいところは縮小して見せるという効果があります.これに対して普通の目盛りではこのような芸当はできません.小さいところの変化が見えるようにすると,大きい値はグラフの天井を突き抜けます.逆に大きい値をグラフ内に収めるように目盛りを打つと,小さいところはほとんど変化が見えなくなります.

次は,1日ごとに2倍になるという例です.下のグラフが縦軸を対数目盛りにしたものです.
logscale.jpg
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