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ホイッスルブロウアー(内部告発者)賞 [社会]

DSC_4232c.jpg#桜を見る会 をめぐって、政府内部からさまざまな文書が漏れて来ている。日本でも一応「公益通報」として告発者を保護する制度はあるようだが、所属組織による「犯人」探しの圧力の方がまだ圧倒的に強いだろう。ところがドイツでは、これに賞を与える制度まであるとのことだ(注11401577.gif)。

昔の縁で日本反核法律家協会から「反核法律家」という同会の機関誌が毎号送られてくる。先日届いた第100・101号(合併)に、ドイツの裁判官についての興味深い記事があった。この会の副会長である藤原精吾氏の「ドイツ反核法律家との交流」というタイトルの短い文章の中にそのことが書かれている。特に目を引いた部分も含めて引用する。最近亡くなったドイツのダイゼロート(Dieter Deiseroth)判事に関する追想の部分である。(下線と注は引用者)
ダイゼロートさんの下した著名な判決は、パフ少佐事件である。少佐が開発したソフトウェアを軍に提供することを求められたが、拒否したために懲戒免職され、その取り消し訴訟だった。ダイゼロートさんの部は処分取り消しの判決を言い渡した。「イラク戦争は国際法違反であり、ドイツがこれに参加していることも違法である。すべての軍人は国際法違反の戦争に反対する権利がある。」という判決であった。「裁判所の仕事は違法な権力行使から市民の人権を守ることだ」と明快な説明があった。
(5行省略)
彼の略歴を云えば、1950年生まれ、ギーセン大学で学び研究者となると共に弁護士として活動、1983年にデユツセルドルフ行政裁判所判事となった。1989年から1991年まで連邦憲法裁判所の研究員として派遣された。その後ミュンスター行政高裁の裁判官及びノルトライン・ヴェストファーレン州のデータ保護コミッショナーの部長を務めた。2001年に連邦行政(最高)裁判所の裁判官となり、2015年まで在職した。

後で気がついたが、ダイゼロートさんは1999年に制作された映画「日独裁判官物語」(注2)にも登場していた。彼は核弾頭配備反対デモでNATOの基地前に座り込み(注3)、またドイツ反核法律家協会会長として紹介されている。核兵器禁止条約の制定に向けても大きな役割を果たした。裁判官が「市民と同じ立場であることの証し」としてサービス業労働組合に加入していると語っている。そして彼はラムシュタイン米空軍基地使用協定はドイツの憲法と法律に従うよう改訂されるべきだとの論文を2016年に発表している。更にホイッスルブロウアー(内部告発者)の活動とその権利についても研究し、「ホイッスルブロウアー賞」の審査員も務めていた。彼はドイツだけでなく、世界平和と核兵器禁止の運動にとってかけがいのない存在であった。
(注は引用者)
ホイッスルブロウアーのこと以外にも、裁判官が基地前の座り込みをしたり、組合に入ったりと、これこそ「普通の」民主主義国のあり方だ、と思わせる部分もある。日本の裁判官も、「上」ばかり見ないで、少しはグローバルな視野を持ったらどうか。

引用した部分より前には、「彼は反核法律家のリーダーであり連邦行政裁判所の判事だとだけ聞いていたが、実に人間味のある、学者かつ活動家であった」とある。「活動家」という呼称は、日本では、市民運動をやっている人でさえも自分のことをそのようには言わない傾向がある。「私はふつうの市民です」とか「ふつうの主婦です」という具合に。ドイツでは、いや、この「ガラパゴス」の外部では、「活動家」が一般的に使われるだけでなく、このように「判事であり活動家」ということも別に奇異なことではないのだ。

(注1)1401577.gifWhistleblower Prize 1999年に設立。国際反核法律家協会のドイツ支部とドイツ科学者連盟がスポンサー。賞金3,000ユーロ。有名な受賞者は、2003年のダニエル・エルズバーグ、2013年8月のエドワード・スノーデン。同じような名前の賞がアメリカで見つかるが、一つは内国歳入庁(IRS)で脱税告発、もう一つは証券取引委員会(SEC)。国家機関なので独立性が問題。
(注2)デイリーモーションで見られます。 これを引用した当ブログ記事
https://www.dailymotion.com/video/x200bke
(注3)基地前座り込みに関する別の判事の文章:「ミサイル配備に反対して座り込んだドイツの判事たち」
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