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左・右からの山本太郎非難・バッシングは「言論・表現の自由」そのものへの挑戦である [社会]

山本太郎氏は「園遊会」という,その名前からしてひとつのパーティの席上で,そのホストである天皇に手紙を渡した.このような席上での手紙のやりとりはふつう何ら「礼儀」とか「作法」という言葉との関連で取り上げるはずのものではない(もし取り上げられるとしても,手紙を渡すときの姿勢とか,態度などだろう).しかし自民党から共産党までが非難,批判の合唱である.右翼・極右の「不敬罪」アナクロニズムは論外だが,社民党の吉田党首は「反省しなければならない」,共産党の志位委員長は「憲法を知らない者の行動」と,左翼も山本氏擁護ではなくその反対側のサイドにいる.これは結局のところ,左翼も広い意味の「菊タブー」の虜になっているということではないだろうか.天皇やそれにまつわる行事は「畏れ多いもの」という感覚[ 1401577.gif]である.応援のクリック歓迎

参議院の議運は,その「所管事項」に議員の処分などありもしないのに,山本議員への「処分」を決めた*.権限がないことを多数決で決めたと称するのは公的なイジメ,公的なパワハラである.

山本議員の天皇への手紙手交という行為は,全く言論・表現の自由で保障された国民としての(その代表である国会議員としての)権利の範疇に属するものである(「スタンドプレー」との非難もあるが,それも表現形態の一種である).その手紙の内容や,渡した相手についての善し悪し,好き嫌いについての議論は当然あってよい.しかしその行為自体に対する「バッシング」,ましてや「処分」などということは,まさに言論・表現の自由への挑戦そのものである.このような異常事態に至った以上,山本氏の憲法的権利を擁護することは,いやしくも憲法を擁護するものにとっては義務である.それでも山本バッシングの陣営に与するならば,「憲法を知らない者の行動」と言うほかはない.

右派系と思われる「夕刊フジ」の,「“四面楚歌”山本太郎氏を中核派が絶賛」という9日の記事**はこの状況を,いわば「反面教師」的によく物語っている.「中核派」というキーワードは,少なくとも50代以上の人間にはネガティブイメージとして認識され,あるいは刷り込まれている.山本太郎氏を擁護するのは今や中核派だけ,という印象操作の意図が明白である.つまり,「もし山本氏を擁護しようとするなら,あなたは中核派と関連づけられますよ」という暗示である.今やかつての「アカ」という,批判派・左翼に投げつけられたスティグマの言葉は,「中核派」に変わったということだろうか?

* https://www.facebook.com/kouichi.toyoshima/posts/443194559119632
** http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131109-00000016-ykf-soci
[注]1401577.gif 左派にとっての「畏れ」とは,"political correctness"に抵触するのではないかという類いのものである.(この項'13.11.28追記)
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リアル

はじめてコメントします。よろしくお願いいたします。まず今は、秘密保護法絶対反対!などの重大局面ですので、そこでの一点共闘が大事だと思います。それを前提として・・・。

山本議員の1件については「天皇に手紙を渡すのがいいか悪いか」が問われているわけではありません。「天皇に礼儀を欠く」という理由で批判しているのは「右の連中だけ」ですよ。

「国会議員」なら誰であっても、天皇に頼みごとをするべきではないんです、少なくとも民主主義の現代においては。

仮に万が一、天皇が何かアクションを起こし事が進むことになったとしても・・・それはとても恐ろしい「戦前回帰」でしょう。それがたとえ脱原発というイイ事であってもダメなんです。

なぜならそれが可能になってしまったら、逆にワルイ事でも同様の事態が起こりかねないからです・・・それが過去の戦争ですよね。現在も自民党などによる天皇の政治利用などは頻繁に行われていますし。誰であっても批判されるべきです。

一般人ではなく「国会議員が、天皇にお願いしよう」という行為はそういう事ではありませんか? 民主主義を謳った憲法の精神に反するものなのです。戦前・戦中の反省から、決してやるべきではない事です。今回山本議員が、共産・社民などに批判されているのは、そこなんですよ。

もし山本議員が本当に「私信の手紙を渡したかっただけ」と言うのなら、わざわざテレビカメラの前で「私信」を見せる必要など全くありませんしね。

脱原発に何とか注目を集めねば!という彼の思いはとても理解が出来ます。でも残念ながら、その方法が間違っているんです。そうお思いにならないでしょうか?

その後の彼の一連の「謝罪」を見てどうお思いになりますか? ブログ主さんが仰っている「菊タブーの虜になっている」のは、残念ながら山本議員の方ですよね・・・。

山本議員は天皇に深々と丁重に謝るよりも、民主主義を飛び越えてしまった事について反省するべきだと思います。支持する方々は、そこを教えてあげるべきではないですか?

議員を辞める必要などありません。でもしっかりとした反省は必要です。天皇に対してではなくて、民主主義に対してです。

とにかく今は一点共闘が先決ではありますけれど。
by リアル (2013-11-10 02:27) 

寂静の矢

yamamotoさん、はじめまして。

極右勢力や新自由主義勢力や原発推進勢力が山本太郎氏を今回の件で叩くのはある意味理解できます。なぜならば、山本氏はそういった勢力にとっては、非常に都合の悪い存在であり、かつ危険で邪魔な存在なので、今回の件をネタにして山本氏を叩き、彼の社会的信用度を貶め、彼の社会的影響力を小さくしたいと考えるのは政治戦略的には正しいからです。

しかし、左派やリベラルが今回の件で山本氏を叩くのは的外れとしか言いようがありません。左派やリベラルが、山本氏を叩く理由としてよく、憲法の精神に反するといったような主張がされますが、日本国憲法第16条で請願権(天皇に対する請願権も含む)が保障されているので、山本氏の行った行為は、立憲主義的には全く問題のない行為です。もっとも、山本氏によれば、手紙の内容は天皇陛下に何かをお願いするようなものではなく、福島の原発収束作業員の方々の現状などをお知らせしたかっただけ、といったようなものらしいので、山本氏の手紙は請願書ではないのでしょうが。

また、イギリスでは王室の方々が政治的なご発言をなさるのはよくある事ですが、日本よりも立憲主義や民主主義の民度が低いとはとうてい思えません。それは当然です。民主主義では主権は国王ではなく国民の側にあり、国王がどのような政治的主張をしようが、国民はその主張に従う義務はないので、国王や王室の方々が政治的な発言をしただけで、立憲主義や民主主義が劣化することなど有り得ないからです。日本のように天皇を国民から隔絶した位置におき、かつそういった隔絶性を、天皇を神のように崇めている右翼や天皇主義者が支持するのはともかく、左派やリベラルまでもが支持している日本の状況はちょっと異常だと思います。

https://www.gosen-dojo.com/index.php?action=pages_view_main&active_action=journal_view_main_detail&post_id=2656&comment_flag=1&block_id=736#_736

「山本太郎が気の毒になってきた。天皇陛下に手紙を渡しただけで、猛然と批判され、皇室行事への出席禁止処分とされ、右翼の暗殺を警戒して警護がついているという。(中略)わしは「脱原発派」だが、そんなポジションは抜きにして、『天皇論』を上梓した者として、今回の山本太郎へのバッシングは異常だと考える。言論人の良心を賭けて、この意見表明だけはしておく」

と小林よしのり氏が述べておられますが、天皇に手紙を渡しただけで右からも左からも猛烈に叩かれ、山本氏を擁護しているのは、一部の極左と、熱烈な山本支持者くらいなものという今の日本の状況は異常だと思います。それだけ日本社会が、多様な言論・表現の自由を認めない社会になってきている、また、超右傾化、ファシズム化しているということなのでしょうか。

by 寂静の矢 (2013-11-10 08:30) 

yamamoto

一週間前の記事で書きましたように,彼の行動が天皇と国政を結びつけるのに寄与する恐れはあります.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2013-11-03
「山本氏の今回の行動が天皇制イデオロギーに貢献する恐れや,そのような意味を持ちうる可能性ははあります.」
でも続けて次のようにも書いています.「しかし事象は多義的であるだけでなく人々の反応がこれを「定義」,「再定義」していく,という側面もあります.彼の行動を評論するだけでなく行動することで積極的な意味に「再定義」しましょう.」

さらに,同じ記事の前の方に書いていますように,「国政に関する権能」を使っての行動を求めたのかどうか,という問題,そして「政治的」という言葉の定義の問題もあります.

以上は前の記事の繰り返しですが,現局面では,この記事で述べたように「言論・表現の自由」に関わる問題になって来たということがあります.仮にリアルさんが言われるような意味を山本氏の行動が持つとしても,それは少なくとも「言論・表現の自由」の範囲に収まるのではないでしょうか?ヘイトスピーチなどこの権利の保護の対象にならないものは別として,山本氏のこの権利が侵害されているとしたら,それを守ることが最優先されるべきだ,これが私の考えです.
by yamamoto (2013-11-10 09:01) 

宗純

(前回コメントと同じような内容で、申し訳無いのですが)
このブログ記事の主張は『まったく、その通り』なのですが、
『左翼も広い意味の「菊タブー」の虜になっている』の部分は、明確な書き間違い。
正しくは、
『左翼も広い意味の「放射能タブー」の虜になっている』です。
そもそも、山本太郎の手紙の内容は、福島第一原発の放射能汚染ですよ。今のマスメディアが、右は産経から左は赤旗までが、小児甲状腺がんなど放射線被害で同一記事を書いている原因ですが、正に『放射能タブー』の虜になっているのです。
挙国一致での鉄壁の『放射能タブー』に風穴をあけようとしたのが園遊会での山本太郎の手紙であり、だからマスコミや全政党がバッシングしているのです。
何故、山本太郎の手紙から、『放射能汚染』を抜くのですか。
そもそもの出発点が、山本太郎が議員に当選した最大原因は福島第一原発の放射能ですよ。
山本太郎の話から放射能を抜くなどは、タコ抜きのタコ焼きと同じで意味を為さなくなる。
この放射能タブーですが日本中に蔓延していて、
今マスコミや野党、有識者が大問題だとしている特定機密保護法と、今起きている深刻な放射能被害を結びつける意見はゼロですが、
安倍政権が隠したい特定秘密とは、放射能被害のことですよ。
特定機密保護法が取り締まるテロの定義ですが、
『政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要』
がテロであるいと言っている様にも見える。
これでは山本太郎議員の園遊会での手紙も、『テロである』で、
普通の市民の請願も繰り返して行えば強要と看做されて全てテロに当て嵌まる。
懲役10年の厳罰の秘密保護法には、テロリズムなど法律が及ぶ範囲に関する定義が規定されていないに等しい。
しかも「特定秘密」だけではなくて「特定有害活動」も同じように取り締まるのですから、ほぼ何でもあり。
この法案ですが、何故か護憲派とかマスコミ、有識者は全員軍事オンリーだと解釈している様ですが、法案には『その他』と何遍も繰り返し書いているのですから軍事だけでは無い。
軍事は元々懲役10年なのですから、そもそも『特定』の意味が無い。
意味不明の『特定秘密』ですが、原発事故の放射能ですよ。
特定機密保護法の担当大臣ですが、原発風評担当大臣との兼務、同一人物なのです。


by 宗純 (2013-11-12 10:35) 

yamamoto

今回の山本議員と天皇という事件で,山本議員にフォーカスすれば,おっしゃるように「放射能タブー」問題,他方,天皇にフォーカスすると「菊タブー」問題,と言う意味です.それも「広い意味」と形容しています.

ある右派ブログに「山本議員のしたことは天皇陛下の”一般国民化”だ」というタイトルの記事があります.
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39114
これは狭い意味の「菊タブー」,いや,より右派的な「不敬罪」イデオロギーから山本氏を非難したものですが,これは逆に彼の行動がこのような政治的意味を持っていることを証明しています.

このような「作戦」など思いもつかず,天皇には全く寄りつかない,という左派の姿勢を「広い意味の菊タブー」と呼べるのではないか,と思ったわけです.
by yamamoto (2013-11-13 20:38) 

寂静の矢

放射能タブーの問題に関しては、内部被曝の問題をタブー化しているのは、政府や原発推進派やマスコミなどの世の中の一部の人間だけではなく、脱原発派も含めた日本社会全体でタブー化しているので、天皇に手紙を渡しただけでは、放射能タブーの壁をぶち破る事はできないと思います。実際、山本太郎氏が天皇に手紙を渡してから内部被曝の問題を語りやすくなったのかといえば、そうではないでしょう。

ただ、今回の山本氏の行為に関して海外では、「よくやった」「勇気ある行為」「人間として当然の行為」といった肯定的な意見の方が多数派のようです。それゆえ、ローマ法王に直接手紙を渡す事によって世界世論に働きかければ、もしかしたら放射能タブーの壁をぶち破るとまではいかなくても、多少の風穴をあける事ができるかもしれません。

ローマ法王に手紙を渡したら渡したで、また色々な方面から叩かれるでしょうが、だめもとでやってみる価値はあるかもしれません。

by 寂静の矢 (2013-11-15 06:41) 

檜原転石

「人間は平等」という原理原則を知らないのはサル並みの知恵でしかないこと。この大前提に付け加えるなら――

ご主人様にすがる奴隷はいつ解放されるのか?
ご主人様の奴隷解放から黒人が実質的な投票権獲得に要した期間はほぼ100年ですよ。

天皇も東電の株を持っているようですが、アキヒトはフクシマの加害者でしょうか、無関係なのでしょうか?

エリザベスは米国のイラク侵略を支持しましたが、あなたは容認するのでしょうか?
by 檜原転石 (2013-11-17 11:33) 

宗純

タブーとして山本太郎の園遊会の手紙を考えれば、ですが、
17日の毎日新聞のコラム『余禄』に、特定機密保護法を危険性で、
「カムイ伝」「サスケ」などで知られる白土三平の漫画「ワタリ」の『死の掟』が出てくるが、下忍たちは掟を破ると支配者から殺されてしまうが、その掟の中身とは何なのか、支配者以外は誰も知らない。
余禄では、
『現代の「死の掟」となりはしないのか。国会で審議が進む特定秘密保護法案のことである。』
と書いているが、白土三平の『死の掟』も『特定秘密保護法案』も、分かりやすく『一言』でいえば『タブー』のことですね。
タブーとは、破った時の懲罰の恐ろしさは構成員の全員が熟知しているが、対照的にタブーとされている中身は良く分からない恐ろしい『禁忌』のことなのです。
菊タブーですが、中身も懲罰もある程度は分かっている。
対して放射能タブーは、その中身自体が特定秘密として隠されているのですから、より高度なタブーであると言えるでしょう。
by 宗純 (2013-11-19 14:31) 

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