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大気中放射能濃度の測定は空間線量より1万倍も高感度 [仕事とその周辺]

1401577.gif11/25注記:一連の記事でろ紙としてQR-100,吸気装置としてパソコンのファンを例示しましたが,このろ紙の圧力損失は流速5cm/sで0.45kPaと大きく,またパソコンのファンはわずか数mmAqの静圧しか出ないので,流量が稼げないことが分かりました.吸気には「ブロワー」と分類されるより強力なものを使う必要があります.(このコメントは一連の記事に共通)

放射性がれき焼却では,行政などが空間線量の値を公表して「問題ない」と言っているようですが,空間線量を見ていても,焼却場から出てくる放射能の変化を見ることは困難です.言い換えれば空間線量に変化が出るようだと,呼吸する大気には相当の,たとえば3.11直後の関東地方の大気程度の汚染があるということです.このため大気中放射能濃度を測定することが重要です.

そこで,だれでも作れる(中学生の夏休み自由研究程度)大気中の微粒子収集装置を提案しています.フィルター紙を各地の市民放射能測定室などに持ち込んでガンマ線を測定すれば,空間線量測定の1万倍以上の感度になります.当ブログの一連の記事をご覧下さい.
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市民による大気中放射能の監視 その1その2その3

そして,この「ハイボリューム・エア・サンプラー」の量産にご協力いただければ幸いです.
以下は「1万倍以上の感度」の説明です.引用した数値や計算の根拠などは次にあります.

Measurement of 134,137Cs Concentrations in the Air of Fukushima-City
「原発事故 緊急対策マニュアル」の中の線量計算について

私自身の,自動車のエアフィルターを使った測定経験では,18時間30分の吸引でセシウム134,137でそれぞれ6E-4と8E-4 [Bq/m^3]を検出できました.( 6E-4 は6×10の-4乗 の意味,また単位は「ベクレル/立方メートル」と読みます.)

これに近い値として,セシウム134,137の両者合わせて0.001[Bq/m^3]が24時間続いたとすると,これは提案の「ハイボリューム・エア・サンプラー」で十分検出できます.ところが,これによる空間線量の増加は微々たるものです.それを見積もってみます.

0.001[Bq/m^3]が24時間続いたときの「時間積分濃度」は86.4[Bq・s/m^3](ベクレル・秒/立方メートル),これにセシウムの沈着速度0.002[m/s]を掛けると,0.17 [Bq/m^2](ベクレル/平方メートル)の地表面濃度となります.

これに地表面濃度から空間線量率への変換係数3.54E-6[μSv・m^2/h・Bq](マイクロシーベルト・平方m/時・ベクレル)(註1)を掛けると,6.1E-7[μSv/h](マイクロシーベルト/時)となります.

他方,大気自体からのガンマ線の寄与は,濃度0.001[Bq/m^3]に,大気中濃度から線量率への変換係数2.015E-4[μSv・m^3/h・Bq](マイクロシーベルト・立方m/時・ベクレル)を掛けて,2.0E-7[μSv/h]となります.つまり地表面からの線量の3分の1です.

自然の原因による空間線量の揺らぎは0.01[μSv/h]程度ありますので,上の程度の汚染による空間線量への影響(地表と大気の合計で8E-7[μSv/h])は自然の揺らぎの1万分の以下ということです.つまり,空間線量にはっきり出るようになったら,大気中の濃度は大変な値になっているということです.

大気中放射能濃度の測定がいかに高感度であるか,したがって重要であるかがお分かりいただけると思います.

(註1) セシウム134,137のそれぞれの変換係数は文献1のTable II.B.3の値を使い(もちろん単位換算),存在比は0.373:0.627とした.これは,3.11直後が等量であったとして,1年半によるセシウム134の崩壊を考慮したものである.

文献1:Report to The American Physical Society of the study group on radionuclide release from severe accidents at nuclear power plants, Rev. Mod. Phys. 57, S1- S144 (1985)

(参考)学習院大学理学部の田崎晴明氏の解説も役に立つと思います.
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/CsonGround.html
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