文科省が子供に許容する3.8マイクロシーベルト毎時を体感する [仕事とその周辺]
「技術的説明その2」を末尾に追記しました.(4/30)
文科省は4月19日に福島県教育委員会に出した通知で,子供の屋外活動での環境線量率の上限を3.8マイクロシーベルト毎時としました.数字だけでは実感しにくいので,この線量率でのガイガーカウンターの鳴り方を実験室で再現してみました.テスト線源にはアメリシウム241のガンマ線源を使いました.強さは37万ベクレル(10マイクロキュリー)です.
まずは,カウンタの周りに何も置かずに,自然のバックグラウンドです.かなり退屈です.
https://www.youtube.com/watch?v=4c-Fi6IWueE
では次に,文科省が決めた3.8μSv/hにほぼ近い,3.5マイクロシーベルト/時でのガイガーカウンタの鳴り方です.
https://www.youtube.com/watch?v=4ZjP4SzuKoY
文科大臣の高木さん,ぜひこの二つの音を聞き比べて下さい.あなたの子や孫がこのような環境で遊ぶのを受け入れられますか?
子供を守るためにまず表土除去を,そしてしっかりした測定を!
技術的説明
これと同一機種のガイガーカウンターでこの1ヶ月ほど測定したところ,10分間計数が170〜180カウントでした.つまり1分間で17〜18カウントです.
佐賀県環境センターによる佐賀市の同時期の線量率は約0.04グレイ毎時前後です.グレイとシーベルトを同一とみなして,3.8μSv/hは平常値の95倍になります.つまり,17カウント/分の95倍の計数率,つまり1600カウント/分に近い値になるように,ガンマ線源をカウンタの近くに置いたものです.
装置は,大学や高校の物理・理科の実験室にふつうにある,島津製のガイガー・ミュラー・カウンタ“RMS-60”です.
ほとんどカウンタに接触させるほど近づけなければならないので,私自身かなり驚きました.右は使用したアメリシウム241のガンマ線源(密封タイプ)です.(佐賀大学理工学部教授・豊島耕一)
技術的説明その2
このガイガーカウンター(GMカウンター)にはシーベルト単位の目盛りはありませんから,上記のように,自然バックグラウンドとの比で「校正」 較正しました.その根拠データを次に挙げておきます.
1)佐賀市における空間放射線量率
http://www.pref.saga.lg.jp/web/var/rev0/0074/6509/Saga_City.pdf
(入り口)
http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1262/kan-sisetu/housyanou.html
2)佐賀大学における同じ型のGMカウンターによる計測結果
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2011-04-05
なお,GMカウンターの検出効率(検出器に入った放射線のうち,検出器が反応する,つまり「鳴る」割合)は非常に低く,たとえばセシウム137の662キロ電子ボルトのガンマ線に対して1%もないと思います.つまり,実際にはこの音の百倍ほどのガンマ線がこの検出器を素通りする,ということです*.これはGMカウンターでガンマ線を受け取る物質が気体なので,密度が小さいからです.これに対して人体はずっと密度が大きいので,もっと「効率よく」反応します.
詳しい公的文書を見つけましたので,もっと知りたい方はどうぞ.
IAEA, 1999年文書(7.3MB)
「原子力あるいは放射線緊急事態におけるモニタリングの一般的手順」
http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1092_jp.pdf
* 細かい話になりますが,この「シミュレーション」で使った線源アメリシウム241のガンマ線エネルギーは60キロ電子ボルトで,このエネルギーだと検出効率はセシウムの場合より数倍高くなります.
文科省は4月19日に福島県教育委員会に出した通知で,子供の屋外活動での環境線量率の上限を3.8マイクロシーベルト毎時としました.数字だけでは実感しにくいので,この線量率でのガイガーカウンターの鳴り方を実験室で再現してみました.テスト線源にはアメリシウム241のガンマ線源を使いました.強さは37万ベクレル(10マイクロキュリー)です.
まずは,カウンタの周りに何も置かずに,自然のバックグラウンドです.かなり退屈です.
https://www.youtube.com/watch?v=4c-Fi6IWueE
では次に,文科省が決めた3.8μSv/hにほぼ近い,3.5マイクロシーベルト/時でのガイガーカウンタの鳴り方です.
https://www.youtube.com/watch?v=4ZjP4SzuKoY
文科大臣の高木さん,ぜひこの二つの音を聞き比べて下さい.あなたの子や孫がこのような環境で遊ぶのを受け入れられますか?
子供を守るためにまず表土除去を,そしてしっかりした測定を!
技術的説明
これと同一機種のガイガーカウンターでこの1ヶ月ほど測定したところ,10分間計数が170〜180カウントでした.つまり1分間で17〜18カウントです.
佐賀県環境センターによる佐賀市の同時期の線量率は約0.04グレイ毎時前後です.グレイとシーベルトを同一とみなして,3.8μSv/hは平常値の95倍になります.つまり,17カウント/分の95倍の計数率,つまり1600カウント/分に近い値になるように,ガンマ線源をカウンタの近くに置いたものです.
装置は,大学や高校の物理・理科の実験室にふつうにある,島津製のガイガー・ミュラー・カウンタ“RMS-60”です.
ほとんどカウンタに接触させるほど近づけなければならないので,私自身かなり驚きました.右は使用したアメリシウム241のガンマ線源(密封タイプ)です.(佐賀大学理工学部教授・豊島耕一)
技術的説明その2
このガイガーカウンター(GMカウンター)にはシーベルト単位の目盛りはありませんから,上記のように,自然バックグラウンドとの比で
1)佐賀市における空間放射線量率
http://www.pref.saga.lg.jp/web/var/rev0/0074/6509/Saga_City.pdf
(入り口)
http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1262/kan-sisetu/housyanou.html
2)佐賀大学における同じ型のGMカウンターによる計測結果
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2011-04-05
なお,GMカウンターの検出効率(検出器に入った放射線のうち,検出器が反応する,つまり「鳴る」割合)は非常に低く,たとえばセシウム137の662キロ電子ボルトのガンマ線に対して1%もないと思います.つまり,実際にはこの音の百倍ほどのガンマ線がこの検出器を素通りする,ということです*.これはGMカウンターでガンマ線を受け取る物質が気体なので,密度が小さいからです.これに対して人体はずっと密度が大きいので,もっと「効率よく」反応します.
詳しい公的文書を見つけましたので,もっと知りたい方はどうぞ.
IAEA, 1999年文書(7.3MB)
「原子力あるいは放射線緊急事態におけるモニタリングの一般的手順」
http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1092_jp.pdf
* 細かい話になりますが,この「シミュレーション」で使った線源アメリシウム241のガンマ線エネルギーは60キロ電子ボルトで,このエネルギーだと検出効率はセシウムの場合より数倍高くなります.
2011-04-29 17:46
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コメント(7)
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私のブログにも転載させてください!
よろしくお願いしますm(_ _)m
by ぴこりん (2011-04-29 22:58)
どうぞどうぞ.
少し前まで加速器を使う実験をやっていましたが,これほどの放射線環境で仕事をすることはまずありませんでした.
週刊ポストの孫正義インタビューにありましたが,ガイガーカウンタで「感じ」ないかぎり,痛くもかゆくもないのです.それが怖い.
by yamamoto (2011-04-29 23:16)
>ほとんどカウンタに接触させるほど
>近づけなければならない
少し離すと鳴らなくなるのは、γで鳴ってるのではなくて、ほとんどαで鳴ってるということです。
Am-241のαで鳴るか鳴らないかは、GMの検出効率の問題ではなく、飛程の問題。
写真の実験と同様にCs-137を測るなら、Cs-137のβで鳴ります。それで鳴るか鳴らないかも、GMの検出効率の問題ではない。
>セシウム137の662キロ電子ボルト
>のガンマ線
正確にはCs-137の娘核種であるBa-137mのγ線です。
GMは、γは計数効率悪いけどαβは悪くないので。もちろん飛程を考慮して測る必要ありますが。
Cs-137のβなら、GMでも効率よく測ることは可能です。
>あなたの子や孫がこのような環境で
>遊ぶのを受け入れられますか?
他の場所より多めに鳴るのがダメなら、温泉に入るのも受け入れられないことになる。
すり替えと飛躍は如何なものかと。
実際の被ばく線量を考えたら、健康に影響はないレベルでしょ。
by latter_autumn (2011-05-06 17:48)
これは密封線源なので,アルファ線は出てきません.
by yamamoto (2011-05-06 21:33)
密封されたα線源の製品ありますよ。Am-241で、ちゃんとα出ます。
これと類似したものじゃないんですか。
http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,9854,110,151,html
by latter_autumn (2011-05-08 14:53)
ずいぶん前に,フランスのLMRI社から「ガンマ線源」として購入したものです.プラスチックのカバーが多分0.2ミリ以上あるので,出てこないと思います.とにかく,何線に感じていようと,平常値の95倍はこんな鳴り方,ということです.
by yamamoto (2011-05-08 16:36)
Am-241でも、αの飛程よりも離して使えばγ線源と同じになります。
そもそもγで鳴ってたら、少し離しただけで鳴らなくなるのは「おかしい」ので。
by latter_autumn (2011-05-08 17:51)