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「コミュニタリアン・マルクス」 [メディア・出版・アート]

ツイッター的「つぶやき」ですが,それにはちょっと文字数が足りないので・・・.

青木孝平という人の「コミュニタリアン・マルクス」という本を読み始めた.サブタイトルは「資本主義批判の方向転換」.コミュニタリアンという言葉は,例のサンデル教授の「ハーバード白熱教室」で知った(サンデル氏自身が「コミュニタリアン」らしい).

はじめの方は資本主義批判のさまざまな理論変遷の歴史が紹介されている.思想史や哲学のベースが貧しいので難解なところも多いが,かなり勉強になる.

マルクス主義による資本主義批判の部分では,古典的マルクス主義による批判の紹介のあとで,J.E.ローマーという人の理論に行き当たった.ミクロな線形理論を使って(*),財の配分のある初期値から出発して,財がより偏在する方向に向かうということを証明したという.つまり資本主義システムのもとでは,資本家階級と無産階級の分化が自発的に起きる.物理の言葉で言えば「自発的対称性の破れ」だ.このような「ミクロ的基礎づけ」は,従来のマルクス主義では無視されて来たのだそうだ.
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このローマー論文の年号を章末のリストにあたると,なんと1986年,ほんの最近のことだ.マルクス主義派の多くは「訓詁学」ばかりやっているのではないかと疑っていたが,ひょっとしたら当たっていたのかもしれない.「資本論」から百年も経たないと,基礎的な数学ツール(この本には「線形数学」とある)を使った基礎づけさえ試みられていないとは!他の学派は盛んに使っているのに・・・.

それにしても(もっと前の方で紹介されているのだが)D.フリードマンらの「リバタリアニズム」の考えの単細胞さ加減には驚く.地位を持った学者がその肩書きを持って発表すれば,どんな極論でもまともに受け取られてしまう可能性があるということだ.恐ろしい話で,これまた「公共の政策それ自体が科学技術エリートの虜となる」例かも知れない.この過激イデオロギーの影響と被害はまだ世界に拡大しつつある.

* ちょっと疑問なのは,ローマーの論文に当たらないと何とも言えないが,線形プロセスだけで非対称が拡大するというのはちょっと奇妙な気がする.何らかの非線形の要素が必要なのではないか.
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