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優れた反戦映画でもある「アバター」 [メディア・出版・アート]

映画「アバター」を鑑賞しました.冒険物語のスペクタクルとしても素晴らしいですが,同時に優れた反戦映画です.映画館に足を運んだのは,出勤はしたものの,まだ屠蘇気分の醒めやらぬ4日夜のことです.

3D映写ということで,どんな割引もない2千円の高価な映画ですが,とても見応えがあります.3時間近い長編なので,3Dメガネをかけての鑑賞は疲れるだろうと思っていましたが,非常に自然に仕上がっているので,老朽化した眼でもセーフでした.
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さて内容ですが,地球から遠く離れた惑星「パンドラ」に埋蔵された高価な資源を求めて進出したアメリカ軍(海兵隊)が,その星の先住民「ナヴィ」を「野蛮人」と見下して戦争を仕掛けるというもの.戦争の技術としては,戦闘機やミサイルなどの従来型に加え,映画のタイトル“Avatar”(分身)のもととなっている,ある斬新なアイデアが中心となって話が展開します.
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ファンタジックに表現される先住民の素朴な暮らしと自然,それに対比して,いかにも「高度技術」で装備し尽くされた米軍(地球軍?)基地ですが,そこで指令を出す鉱物資源開発会社の人間や軍人たちの口から出る言葉の軽薄さ(「株主が満足しない」という言葉も聞かれる)と残忍さ.「どっちが野蛮人?」と,この映画は問うています.

「これはまさに現在アメリカが,アフガニスタンやイラクでやっていることだよ」と監督は言っていると,私は受け取りました[註].もちろん「侵略の残忍さ」とか,「異民族への支配」,あるいは「人間の強欲」という普遍的なテーマを扱っているのですが,それを今日の世界に当てはめて,惑星「パンドラ」がアフガンやイラクの言わば「アバター」であると想像する人は,観客のうちでどのくらいでしょうか?そして,もしバラク・オバマがこの映画を見たとしたら,一体どのように解釈するのでしょうか?まさか「ナヴィ」を「タリバン」や「アルカイダ」と見なしたりはしないとは思いますが・・・.
laputa.jpg
(3D映写について)
映像そのものはすばらしい出来上がりに間違いないのですが,映画館での効果としては,偏光を使う以上,どうしても光量不足(視野が暗い)になるのは避けられません.スクリーンを小さくして,裸眼ではまぶしいくらいにして上映すればこの問題は解消出来ます(さらに料金が上がる?).偏光メガネは,できるだけ明るくするための反射防止コーティングが施された上等なものでした.見終わったら返却しなければなりません.

字幕版は,画面からの情報量が多いので(奥行き情報が追加)ちょっとつらい.それに,字幕までの「距離」は固定されているため,ときどき登場人物の“体の中”に現れたりします.これではせっかく「実像」を見せているにもかかわらず,映像が「虚像」であるかのような印象を与えるので,これもマイナス要因.3Dは吹き替え版に限ります.

3Dによって迫力が増すかと言えば,100パーセントそうばかりとも言えないようです.従来の2D映写では想像力で奥行きを感じ取っているのですが,この想像力が停止させられ,「そこに見せられるだけ」の奥行き感に限定されてしまいます.これはむしろ映像のスケールを小さくしてしまっているのではないかと感じました.

3Dと言えば,たまたま私の今年の年賀状は,月の3D画像をモチーフにしたものでした.
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/blog/greeting2010.pdf

1401577.gif3Dつながりで,ブログ内と関連サイトの立体映像関連の記事にリンクしておきます.
中秋の名月,少し手の込んだ楽しみ方を・・・
中秋の名月ステレオ版
ゴジラスコープ
空間描画装置(Space Vision)

[註] 米軍がアフガニスタンで行っている「アバターまがい」の作戦については,拙ブログ記事をご覧下さい: 宇宙を経由した殺人・テロ
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コメント 5

Tsugumi

トラバありがとうございました。

2Dでも楽しめるんですね。

それも日本語吹き替え・・・・

しかしうちの夫婦ではそれはありえません。

だってうちのだんな様イギリス人ですから~~~(爆)
by Tsugumi (2010-01-06 09:56) 

yamamoto

動物に乗って空を飛びまわるのは「ネバー・エンディング・ストーリー」を思い出させます.でもちゃんと翼があるのでより現実的ですね.また,空に大きな「島」が浮かんでいるのはガリバー旅行記のラピュタのよう.Tsugumi さんのブログに「ダンス・ウィズ・ウルブズ」に似ていると書いてありましたが,先住民インディアンを「征服」した白人の原罪意識のようなものも裏にあるのでしょうね.(この映画は私はまだ見ていませんが・・・)
by yamamoto (2010-01-06 22:48) 

JUNSKY

明けましておめでとうございます。(ちょっと間があきましたが)

TBありがとうございます。
私の評価とは全く違って『高い評価』ですね。

私は、まず先住民ネイティブ・アメリカン(いわゆるインディアン)を殺戮したアメリカ移民軍(騎兵隊など)を想像しました。
それに続いてイラク・アフガニスタンそしてベトナム・インドシナでした。

中高年の多くの観客がそのような感じを受け取ったのではないでしょうか?

しかし、アメリカの戦争政策に怒りの声を挙げる方法としては成功していない(当方のブログでは「子ども騙しの大言壮語」と表現)と思います。

私は、映画の舞台が元々英語圏という訳ではなく、想像の国の話だと解っていたので、日本語版を選びましたが違和感がありませんでした。

異星人が英語をしゃべる方が違和感があります。

まぁ、アメリカ映画はドイツが舞台の「ワルキューレ」でも冒頭以外は全部英語で通すというお国柄ですからね・・・

さて、3Dメガネの方ですが、こちらは当方のブログと同じ感想ですね。
“暗い”と言うのが本音です。
あなたも言っているように、スクリーン投影をもっと明るくするべきでしょう。
それと慣れていないせいか?3Dであることの方に違和感がありました。
何か現実離れしているような。
それと事前に言われていたほど、目の前に迫ってくる感じはしませんでした。

それと、トリアス久山TOHOシネマでは300円追加料金を払えば、割引は使えましたよ。
私の場合は、1か月フリーパスを12月末に発行してもらったので、300円でこの映画を見ました。

今後ともよろしくお願い致します。
by JUNSKY (2010-01-08 09:56) 

yamamoto

どんなおとぎ話でも,作者は現代の問題を意識しながら創っていると思うのです.キャメロン監督も例外ではないはずです.私もJUNSKYさんと同じように,アメリカ先住民と白人の問題を連想しました.なにしろ,「ナヴィ」のアピアランスはアメリカ・インディアンを連想させますから.そしてこれは決して過去の問題ではなく,現代に引きずる問題です.そして,記事に書きましたように,今アメリカがやっている戦争・・・.

しかし,この映画を取り上げているブログを10程見ましたが,このような問題に触れているのは皆無でしたね.そういう意味では「成功していない」(監督にその意図があったとしてですが)ということでしょうか.

障がい者が,兵隊として,それもよりによって海兵隊で活躍,というのは,道徳的にはアンビバレントですが,アイデアの斬新さという点ではは確かですね.

ことしもどうぞよろしくお願いします.
by yamamoto (2010-01-09 00:49) 

yamamoto

米国の保守派が,反戦映画という私の見方を「支持」してくれています.
「アバターは反米・反軍映画」保守派いら立ち
2010年1月31日(日)(読売新聞)
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/world/20100130-567-OYT1T00839.html
by yamamoto (2010-01-31 21:45) 

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