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国立環境研の江守正多氏の話を聞く--温暖化問題 [仕事とその周辺]

1401577.gif(2014.5.23記:その後の地球平均気温について記事を書きました.)
日本科学者会議という大学教員などによる団体が,昨日・今日と鹿児島市で主に環境・エネルギー問題を主なテーマとしてシンポジウムを開いた.毎年恒例の「日本科学者会議九州沖縄シンポジウム」というイベントである.昨年は福岡で開かれ,講演者の一人であった益川敏英氏にノーベル物理学賞が贈られるというビッグニュースが,その講演の2日後に入った.応援のクリック歓迎 (1日1回まで)

SANY0105-01.jpg江守正多氏の話

今回のメインの講演者は国立環境研・地球環境研究センターの江守正多氏で,コンピュータシミュレーションによる地球温暖化の将来予測を研究テーマとされる.おそらくIPCC報告にも関与されているのではないかと思う.

話は総合的で,また非常によく整理されていて分かりやすく,質疑応答も含め,私にとってこの問題への理解がかなり進んだ.気候予測というのは大規模な計算機シミュレーションによるものなので,結果がこうなったと言っても,門外漢にとってはいわばブラックボックスから出てくる答えのようなもので,「自分で確かめる」ことが出来ない.これは他の分野でも似たようなことかも知れないが,気候モデルとなると,複雑さのチャンピオンのようなもので,その程度がはなはだしい.これが「懐疑説」「否定説」が広く流布される原因の一つだろう.

世界で20の独立したグループが研究

この分野での「追試」に相当するものは,同等の規模のコンピュータシミュレーションということになるが,この点について質問してみた.それによると,日本では2グループが,世界では20のグループが同じような仕事をしているとのことで,それらの結果は「傾向」という点ではだいたい一致するとのことである.時間の刻みは忘れたが,メッシュ,つまり地球の大気・陸地・海洋をモデル化するときの空間的な「区切り」は100キロ四方とのことである.また,物理学的な基本方程式だけでなく,経験的に得られる関係式も計算コードには組み込まれる.グループでの違いは何かという質問には,これらの経験的な式の入れ方が少しずつ異なっている,というような答えだったと思う.

一部の否定派による不適切なデータ比較

興味深かったのは,最近懐疑派・否定派によって言われている,「地球の気温は下がっている」という主張についてだ.先日,佐賀で開かれた広瀬隆氏の講演会でも,広瀬氏はこのことを強調していて,「地球温暖化説は崩れた」と主張していた.しかしこれは短期的な時間変動をならしたデータとならしてない生のデータとを比較するという,不適切なデータの扱い方によるようだ.江守氏のスライドと同じものが環境省のウェブサイトにあったので転載する.
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/knowledge.html
温暖化の観測・予測及び影響評価統合レポート「日本の気候変動とその影響」[PDF 6,764KB]
1960-2025.jpg
 →1401577.gifその後の気温変化はこちら.
最近数年間の気温の低下傾向(2002年あたりから現在までの下向きになった黒い線)と,予測値の赤い線とがずれていることをもって「予測は外れた」と言うのだ.おそらく広瀬隆氏が示したグラフもこれだったと思う.しかし,個々のシミュレーション結果というのは帯状に広がった緑の線であって,このように短い周期でゆらぐものなのだ.つまりこの帯の中に収まっていれば,むしろ「当たった」と評価すべきなのだ.

kanreika.jpg「ストップ浜岡原発」という市民団体のブログもこの不適切な比較のグラフを転載して議論している.またこのブログは広瀬隆氏の最近の講演のビデオも掲載しているが,長い講演の最後で,スライドは出していないが,彼はやはり同じことを言っている.

夜は懇親会で少しだけ江守氏本人と直接言葉を交わす機会があった.酒は好きのようだったが,「足」係にせき立てられて,「もう少し飲みたかったのですが・・・」と言い残してホテルに向かわれた.

ウェブに江守氏による連載記事
「日経エコロミー」に江守氏の連載がある.今回の講演と重なる内容もある.
過去1000年の気温変動の虚実(09/11/27)
http://eco.nikkei.co.jp/column/emori_seita/article.aspx?id=MMECza000024112009

「朝まで生テレビ!」の「温暖化 vs 寒冷化」討論(09/10/26)
http://eco.nikkei.co.jp/column/emori_seita/article.aspx?id=MMECza000022102009&page=1

追記:上記「日経エコロミー」11月27日の江守氏の記事にもあるが,ネットで話題になり始めた"Climate Gate"事件のことも話題にされた.英イースト・アングリア大学気候変動研究ユニットのサーバーがハッキングされ,研究者たちの個人的な電子メールや文書がネット上に流出した事件である.これに関してこの記事で江守氏は,「仮に科学的に不健全なデータ操作を研究者がして」いて,「過去1000年の気温変動に関するIPCCの結論が万が一これに影響を受けたとしても,いわゆる『人為起源温暖化説』の全体が揺らぐわけではまったくない」と述べている.
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