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ピンぼけで,広島・長崎の願いからズレた赤旗の記事--米印核協定問題 [反核・平和]

引き続き,米印核協定のメディアの扱いについて.
9月8日のしんぶん赤旗が原子力供給国グループ(NSG)臨時総会の結果を報道したが,粗雑で,核廃絶を願う多くの人々の感覚からずれたものになっている.それどころか,その「論理」は床屋談義レベルだ.そして,日本政府がこれを容認したことにへの批判や非難のひとこともない.この分野は人材不足なのだろうか?

粗雑さは「解説」の冒頭のパラグラフに集約されている.(赤色は引用者)
「今回問われたのは、核不拡散条約(NPT)に加盟せず核兵器を開発した国(インドはその一つ)に対し、民生用の原子力(核)協力を行うことを認めるのは、NPTを掘り崩すという問題でした。しかし核不拡散を保障する最大のかぎは、すべての国の核兵器を禁止し廃絶することにあります。」
このように,NPTを台無しにするということと,「核廃絶」とを並べて対比するという,およそ訳の分からないはぐらかし論法になっている.決定に対する非難も,アメリカの提案に賛成した日本政府を批判する言葉も全くない.5日の,院内集会を報道した記事の見出し「政府は承認するな」という言葉はどこに消えたのか?
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続けてNPTが不平等条約であることを,今回のインドの「特別扱い」と並べて論じているが,NPTの不平等性は承知の上で,かつそれが今日,核廃絶への重要な道具立てになっていることは,この分野で活動する人の常識である.したがって例えば原水協も,「2010年のNPT再検討会議は、核兵器廃絶への展望を切りひらく重要な機会である」(今年の国際会議宣言)として,これに焦点を合わせて国際署名を取り組むなど,活動を強化しようとしている.NPTを台無しにするということは,2010年の再検討会議をあらかじめ台無しにするということだ.「核廃絶」への道のりをいっそう困難にするということである.このしんぶん赤旗の「解説」執筆者は,この単純な論理が理解できていないようだ.

9日に,原水協,原水禁,被爆者団体を含む17もの広範な諸団体は共同で「インドを特例扱いするNSGガイドライン変更にあたっての声明」を発表した.「解説」子は是非ともこの文書を「学習」してもらいたい.その最後から2番目の段落を全文引用する.
日本の政府は、被爆国の政府でありながら、広島、長崎という被爆地の被爆者団体、両市長、両県知事、更には市議会や県議会の決議、その他多くの地方自治体決議、永年にわたって核兵器廃絶運動に携わってきた全国の被爆者団体や原水禁団体を含む平和市民団体の一致した要求、更に最近では超党派の国会議員の中にも起こりつつあった反対の声を無視して、NPT体制への打撃を最小限にする努力さえせず、インドを例外扱いにする米印原子力協定を容認したのである。われわれは、被爆国の国民としてこのような政府を持ったことに対し、慚愧に絶えない思いである。
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しんぶん赤旗の該当記事
米印の原子力協定/政府は承認するな/超党派集会/笠井氏あいさつ
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-09-05/2008090504_01_0.html

対インド核輸出を解禁/米提案 供給国総会が承認
解説/すべての国の核廃絶こそ
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-09-08/2008090807_01_0.html
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latter_autumn

>NPTの不平等性は承知の上で,かつそれが
>今日,核廃絶への重要な道具立てになっている
>ことは,この分野で活動する人の常識である

NPTは、NPTに参加している米英仏露中の核兵器廃絶にも、参加していないインドやパキスタン等の核兵器廃絶にも、何ら貢献していません。
NPTに参加している非保有国の保有禁止には貢献していますが、それは初めから持っていないのだから、そのこと自体は核廃絶とは関係ない、文字通り単なる核不拡散でしかない。
で、その核不拡散が揺らぐ恐れがあるのはそもそもNPTが不平等条約だからですし、参加していない国があるのもNPTが不平等条約だからです。
NPTが「核廃絶への重要な道具立てになっている」などというのは、非現実的な幻想でしょう。

>NPTを台無しにするということと,「核廃絶」
>とを並べて対比するという,およそ訳の分から
>ないはぐらかし論法になっている

赤旗の問題認識は、
「NPTを台無しにしている元凶は保有国である。
非保有国が不拡散の義務を果たしているのに、保有国は廃絶の義務を果たしていない。
保有国は義務を果たすべきではないのか。」
・・・という論法だと、私は解釈して納得していますが、はぐらかしなのですかね?

>決定に対する非難も,アメリカの提案に賛成
>した日本政府を批判する言葉も全くない

赤旗は、NPT体制下の保有国の義務不履行を根本的な問題として批判しているのではないですかね。
私はそのように読み取りましたが。

>原水協も,「2010年のNPT再検討会議は、
>核兵器廃絶への展望を切りひらく重要な機会
>である」

NPTの会議は1995年、2000年、2005年にも開かれていますが、いずれも成果は乏しいというか、核兵器廃絶の進展は実現していません。
2010年で「今度こそは」と期待するのはいいとしても、その期待通りになる保証はありません。
このような経緯を踏まえて見れば、この度の米印核協定に対するNSGの追認などは、過去の不誠実の積み重ねに新たな不誠実をささやかに追加するものに過ぎない、「今さらそれがどうした?」という程度のものでしょう。
過去の不誠実の積み重ねを「不平等性は承知の上で」というのなら、今回のインドの特別扱いも「不平等性は承知の上で」でいいのではないですかね。核兵器保有の権利を国際的に公認された国が5ヶ国から6ヶ国になっただけ、核兵器廃絶が進展していない事実に何ら変わりはない、ということで。

「せっかく今まで核兵器廃絶が進展してきたのに、今回のインドの特別扱いで一転してぶち壊しになった」という訳ではありませんよね。
by latter_autumn (2008-09-10 17:13) 

yamamoto

「NPT・・が・・核廃絶への重要な道具立てになっている」というのは,次のようなことです.
NPTはその6条で,核保有国の核軍備を縮小する条約のための「交渉義務」を課していますが,2000年の再検討会議で「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」ということばがその最終文書に入りました.世論を高めてこの実行を迫るというのが,2年後の再検討会議の重要な課題とされています.私もそう思います.その意味で,NPTは当初のものとは違った,前進した意味を持ったと思います.

>赤旗の問題認識は、「NPTを・・・という論法

「・・・」内に書かれたこと自体は全くそのとおりですが,今回の問題と絡めた「論法」になっていますか?論法というより一つの「命題」ですね.

問題は,「廃絶の義務を果たしていない」どころか,むしろ仲間を増やす行為に合意してしまったということです.これが今回の問題の焦点なのです.

>赤旗は、NPT体制下の保有国の義務不履行を根本的な問題として批判しているのではないですかね。

自分たちが決めたNPT体制そのものを破る,これまた「義務不履行」です・・・というより,破壊行為です.等しく,あるいはそれ以上に「根本的な問題」です.

コメントありがとうございました.

by yamamoto (2008-09-11 21:02) 

latter_autumn

>NPTはその6条で,核保有国の核軍備を縮小
>する条約のための「交渉義務」を課しています
>が,2000年の再検討会議で「自国核兵器の
>完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な
>約束」ということばがその最終文書に入りました

2005年の会議でその約束の具体的な履行が迫られましたが、成果なしでした。その上アメリカはCTBTにも不参加を表明しています。

>自分たちが決めたNPT体制そのものを破る

非保有国から見て、NPTが核兵器廃絶にさっぱり役立っていないのは、明白です。それは今回のインドの特別扱いに始まったことではなく、NPTが成立して以来30年以上も続いてきたことです。

>前進した意味を持ったと思います

現実に具体的に履行されない約束です。保有国の不誠実が続いています。
従って、私は結局前進していないと認識しています。例の赤旗の記者も同じ認識でしょう。
認識、見解の相違ということになります。

>今回の問題と絡めた「論法」になっていますか?

仮にインドの扱いを従来通りに維持しても、NPTが核兵器廃絶にさっぱり役立っていないという事実は変わりません。
核兵器廃絶という命題に照らせば、今回のインドの特別扱いは、これまでNPTに参加している保有国が堅持してきた核兵器存続(約束不履行)の不誠実の根幹に、新たな枝葉を追加するものに過ぎません。
赤旗の記事は不誠実の根幹の指摘であり、今回の問題に絡めた上でもっと大きな問題が繋がって存在しているという主張でしょう。
はぐらかしとは思えません。むしろ鋭い指摘だと思います。

インドの特別扱いを続けろ、と主張するのはいいとしても、それだけを言っていたのでは問題の根幹が霞んで核兵器廃絶からさらに遠のいてしまうのではないでしょうかね。
by latter_autumn (2008-09-12 19:58) 

yamamoto

>赤旗の記事は不誠実の根幹の指摘であり、・・・
>むしろ鋭い指摘だと思います。

なぜこの記事が「根幹の」「鋭い」指摘と言えるほどのものだとおっしゃるのか,分かりません.もう少し分かりやすく説明していただけないでしょうか.「すべての国の核兵器を禁止し廃絶することにあります」とか「核兵器拡散を防ぐ一番の保障は核兵器廃絶」という言葉を繰り返すだけならたやすいことではないでしょうか.もちろんNPTが不平等条約だということも.

>インドの特別扱いを続けろ、と主張するのはいいとしても、
えっ?そんなこと言ってませんが.「特別扱いするな」と,引用した反核団体は言っているのです.もちろん私も.そして5日の赤旗のように共産党の笠井議員も.

念のために申し上げますが,「核廃絶はNPTを通じて行われる」などと言っているのではありません.このブログでも繰り返し書いていますように,非暴力直接行動も,特に現在の「核の鎖の最も弱い環」であるイギリスでは特に有効かつ重要です.他にもいろんな行動形態や課題があります.

しかしNPTにまつわる問題を,核廃絶にとって「枝葉」末節のもの,と捉えるのは間違いだと思います(latter_autumnさんの文面からはそう感じられます).共産党もこれを重視するからこそ,リンクした9月5日の赤旗の記事のように,国会内集会に参加し,笠井氏も「核兵器開発をおこなう国には原子力協力をしないよう日本政府がNSGで対応すること」を求めたのだと思います.
by yamamoto (2008-09-13 06:47) 

latter_autumn

>えっ?そんなこと言ってませんが

すみません。「インドの特別扱いをするな」の間違いでした。

>なぜこの記事が「根幹の」「鋭い」指摘
>と言えるほどのものだとおっしゃるのか

インドの特別扱いをしようがしまいが、核兵器廃絶にはほとんど影響しない。
インドについて幾ら云々しても、米ロ等保有国の約束不履行は何ら改められない。
現実にこれまでNPT不参加国は国際的な原子力技術協力の枠組みから排除されてきたが、それでも保有国の基本政策は実質的に変わることなく、保有国の核兵器廃絶は具体的に進展しなかった。
・・・ということです。

>NPTにまつわる問題を,核廃絶にとって
>「枝葉」末節のもの,と捉えるのは間違い
>だと思います

いえ、私の認識では、NPTに基づいて保有国が約束を守ることは「根幹」ですが、インドの特別扱いに拘るのは「枝葉」です。赤旗の記者の認識も同じだと思います。

>「核廃絶はNPTを通じて行われる」などと
>言っているのではありません

あれ、NPTの2000年の会議ではそういう意味で確認した合意になっていますよ。
そもそもそれ以前から、核軍縮義務はNPTの条文で明記されてましたし、国連の決議や国際司法裁判所の勧告でもその旨指摘されてきましたし。
本来ならばNPTは核廃絶のベースになるはずのものでしょう。

>非暴力直接行動も,特に現在の「核の鎖
>の最も弱い環」であるイギリスでは特に
>有効かつ重要です.他にもいろんな行動
>形態や課題があります.

2010年の会議で核廃絶の現実の具体的な進展があればよいですが、難しいでしょうね。

核兵器反対運動は、核兵器廃絶がさっぱり進まない現状を変えることができていません。
今後も保有国の不誠実は変わらないと思います。
by latter_autumn (2008-09-14 16:32) 

yamamoto

NPTの2000年は確かに言葉だけですが,スコットランドに目を向けていただければ,そこでは反核政府が成立していることが確認していただけると思います.そして同地域(イギリスの唯一の核兵器基地がそこにあります)で核兵器を違法化する法律が準備されています.もっと多くの人がこれを知って,ロンドン政府に圧力を加えることができれば,核兵器国の一角を崩すことができます.イギリスの核は「わずか」200発ですが,それでも政治的意味は大きいと思います.
by yamamoto (2008-09-14 21:28) 

うろこ

TBありがとうございます。NPTの他にも、国際条約そのものが形骸化している事が問題な気がします。体面をとりつくる為に一応参加するけど、どうとでも解釈できるように変えたり。アメリカとか、アメリカとか、アメリカとか、が( ̄_ ̄;)

by うろこ (2008-09-16 08:49) 

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