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個人と組織との力のバランス [社会]

2005年2月放映の「NHKスペシャル・フリーター漂流」が YouTube にアップロードされている.6分割,全部で1時間のドキュメンタリーをPC画面上で全部見た.
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/596123ecdf75aacaded2e19ff4e41dd9

ハケンでも下請けでもない,「請負い会社」なるものに奴隷同然に扱われる若者たちの実態が描かれている.今の日本とはこんな社会だったのかと,自分の認識不足が恥ずかしくなった.「後期」高齢者などとお年寄りを切り捨てるだけでなく,このように若者も「交換部品」として使い捨てるシステム,その犠牲の上に非正規労働者以外の人々の生活が成り立っていたのだ.(ちなみに,この番組に登場する請負会社とは,まさに件の「日研総業」のことらしい.)

そのような劣悪な雇用条件が広範に存在することが,経済そのものにも悪影響を与えているのだろう.貧困や生活不安定による大衆の購買力低下→財貨・サービスの販売不振→企業の業績不振→雇用条件のさらなる悪化という,非常に古典的な悪循環に陥っているのだろう.あまりにも古典的過ぎる.

小泉純一郎は「改革には痛みが伴う」などと言って労働者や市民の犠牲を正当化し,資本主義過激派,市場原理主義派の政策を取ってきた.その「改革」の目的の一つは「国際競争に勝つ」ことだったはずだ.これだけ「経済」優先でやって来たのだから,福祉や教育の面はともかく,経済指標では外国に「勝つ」とまで行かなくても,ひどく負けてしまっているなどと言うことはないだろう.そう思って,その主な指標と言ってもいい「国民一人あたり国内総生産(GDP)」の推移を調べてみた.ところがこれが驚くべき結果になっている.
gdpdn-sl545w.gif
(内閣府のウェブサイトから) 「改革」あっても成長なし??
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h18-kaku/percapita.pdf

このように,小泉内閣の期間中,就任時2001年の5位から退任の2006年の18位へと順位は急速に下がり続けて,しかもそのスピードが加速している.もちろんGDPがすべてではないが,では小泉は他に何を「成果」として挙げるつもりだろうか?

対照的なのがフランスで,常に16位か17位と非常に安定している.そして06年に初めて日本より上位になった.フランスと比べていつも不思議に思うのは,有給休暇も長く,残業もなく,カローシという言葉もない,そのような働きかたをしているフランスの市民や労働者が,ものすごく働く日本の労働者に比べて,その分だけ経済的に貧しい生活をしているかというと,とてもそうは思えないということだ.経済系の人には.このカラクリをわかりやすく簡潔に説明してもらいたいと思う.

今の時期,フランス人の話題はもっぱらバカンスをどう過ごすかということらしい.
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大学教員にも正規・非正規の大きな「格差」が存在する.非常勤講師を専業として生計を立てている多くの人たちがいる.物理学会の会誌の6月号(最新号)に,元信州大学教授の勝木渥氏による「ある非常勤講師の場合」という文章が掲載され,その生々しい実態が明らかにされた.著者の了解は取れているので,会誌編集部のOKが出たらウェブに転載したいと思っている.→1401577.gif こちらに転載しました.

このような格差問題を生み,そしてそれを克服できない背景の一つにはイデオロギー的なものがあると思う.それは「個人と組織との間の力のバランス」という問題だ.大学教員の「任期制」導入を契機として,このバランスが著しく組織の側に傾いてしまったと思われる.それは企業社会においても言えることだ.


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Runner

これはある意味当然の結果でしょうね。
「新自由主義」というのはウソで、実際は「旧自由主義」に近いことをやっているのですから。
ただ、このウソを指摘する人があまりにも少ない。
左翼は「正しい新自由主義」はおろか「より良き資本主義」について語る立場にないとして黙っている。
だから、多くの若者が小泉改革を信じてしまっている。

本当に「新自由主義」をやりたいのなら、その前提となる「平等」「公正」といった文化的インフラを整えないとダメなのに、そんなこと全くやる気がないし、言うことさえしていない。
だいたい、日本経済は元々「市場原理」なんか効いてないじゃないですか。
談合はやりたい放題。独禁法や公取も一応欧米のマネをして存在はしているものの、開店休業状態でやる気なし。
「公正な競争」なんかほとんど誰も尊重していません。
by Runner (2008-06-15 02:54) 

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