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九条擁護の集会を開いても憲法原則の蹂躙に目をつぶったら偽善 [社会]

もう一週間も経ちますが,次のような,大学構内での学生大量逮捕のニュースがありました.法政大学構内で,5月28日に5名が逮捕され,翌日これに抗議して集まった学生33名が逮捕されました.これだけの事件なのに,メディアはもちろん,ネット上でもこの情報はわずかしか流通していません.

中核派全学連委員長らを逮捕 傷害容疑で警視庁(朝日)
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/K2008052802620.html
http://www.asahi.com/national/update/0528/TKY200805280262.html?ref=goo
中核派活動家3人を逮捕=法政大警備員に傷害容疑-警視庁(時事通信)
http://www.asyura.com/07/news6/msg/424.html

このように「中核派」という冠が付けられることによって,ほとんどの人は「引いて」しまうのでしょう.そこが権力のねらい目だということに気づく人も少ない.またメディアは「傷害容疑」の真偽を調べようともしません.

法政大学では一昨年3月,学内での単なる言論活動を理由に29名が逮捕されるという事件があり,さすがにこれに対しては抗議と学生支援の行動が起こっています.当ブログでも取り上げました.

こんどは法政大学で言論弾圧
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2006-03-21

今回の逮捕者の中に,前回と同じく織田陽介君の名前がありますが,彼が東北大学有朋寮の委員長をしているとき,私は,国立大学の「独立行政法人化」(独法化)反対で寮や学生自治会に講演に呼ばれてよく仙台まで出かけたものです.02年当時の全学連委員長の中平さんにも反対運動を要請しましたが,「態度を決めていない」として本格的な協力が得られない中で,有朋寮や東北大学自治会は独法化反対を早くから打ち出していた数少ない学生団体の一つでした.

たしかに彼は中核派の活動家と思われますし,中核派が過去の暴力を清算したという話を聞きません.しかし東北大学では,彼自身はもちろん,運動も全く紳士的,平和的であったし,逆に「暴力事件」をでっち上げたのが大学側であったことを私はよく知っています.ですから,冒頭の「傷害容疑」もでっち上げという心証を持ちます.
(東北大学での暴力事件でっち上げについては次の記事をご覧下さい.)
 検察側の文書から浮かび上がる「大学による犯罪」の疑惑1401577.gif2015.9.リンク修正

ちなみに,東北大学自治会は3年前に,F・ダバディー氏を新入生歓迎行事の講演に招き,氏は自分のブログでその学生たちを賞賛していました.
 (関連記事:東北大学学生自治会主催のダバディー講演会
  残念ながらリンク先の記事は消滅)

一昨年来の法政大学の事件に左翼やリベラルの多数が関心を持つという状況にないことは,あきらかに「中核派」のキーワードが影響していると思われます.しかし人はその所属団体や思想を理由に権利や自由を奪われるようなことがあってはならないのです.あくまでも現実の行為に即して評価されなければなりません.
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「しんぶん赤旗」も,ビラ配り逮捕の問題は取り上げますが,言論・集会弾圧という意味では性質は全く同じであるこの法政大学の事件を取り上げません.これはダブルスタンダードと言わざるを得ません.

一般に,口で「護憲」と言っても,そして九条擁護の集会をいくら開いても,実生活で憲法原則が無視されているのに目をつぶっているのでは,それはまさしく「偽善」の誹りを免れないでしょう.「『ニーメラーの詩』の書き出しは『共産主義者』でなくてもいい」のです.

以下,この問題を扱ったいくつかのネット記事へのリンクです.
[AML 19870] 38人の学生を釈放しろ」賛同署名にご協力をお願いします
http://list.jca.apc.org/public/aml/2008-June/019364.html

薔薇、または陽だまりの猫
法政大学で5月28、29日、38人の学生が逮捕されるという大弾圧
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/74e99cd3ab5d176299b59c93177d1086

(当ブログ内)
法政大学事件:五十嵐氏の論調について
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2006-03-22
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コメント 7

gataro

トラックバックありがとうございます。該当記事はheartさんのものです。私は昨年中頃から彼女の共同編集人になっているHNをgataroという者です。

heartさんはすでに引退されて、彼女のブログを私が引き継いで編集しています。トラックバックを返すには、彼女の記事を編集しなければなりません。同僚だったとはいえ他人の記事に変わりはありません。さわるのは拙いなと思いました。

そういう事情ですので、お許しください。
by gataro (2008-06-07 10:42) 

たくじ

私は宮城県で活動している一左翼ですが、
8年ぐらい前、私の身内が東北大学でチラシをまいているとき、
中核派の人達に囲まれてチラシまきをやめさせられるということがありました。
私の身内はかなり気の弱い方です。
その身内が複数の人間に囲まれて行動をやめさせられるというのは、
どれほどの恐怖であったか、今でも怒りで興奮してきます。

>しかし東北大学では,彼自身はもちろん,運動も全く紳士的,平和的であったし,

こういう行動が紳士的、平和的と言えるでしょうか?
中核派であれ、民青であれ、お互いの言論を保障して自由に議論を行うのが民主主義です。
相手の言論を封じることは絶対に許されません。
だから私は中核派を許すつもりはないし、擁護もしません。

しかし、法政大学での学生に対する弾圧には絶対に反対です。
言論に対する弾圧は権力者が行おうが、中核派が行おうが許されないものです。
たとえ弾圧された相手が中核派であっても、ダメなものはダメだと言う必要があると思います。
それは多くの左翼が乗り越えなければいけない壁じゃないかと思うのです。
by たくじ (2008-06-10 02:46) 

yamamoto

初めて東北大学学生自治会とつながりを持ったのが,2001年3月8日,衆議院第一議員会館での独法化反対集会でした.そのちょっと前になるのでしょうか.情報ありがとうございました.
申し遅れましたが,gataroさん,コメントありがとうございました.
by yamamoto (2008-06-10 18:08) 

tamaji

色々検索してたらこちらにたどり着きました。
ちょっと足跡ついでに一文。

法政大学で行われている事はそうとうひどい事のようですね。
おっしゃるとおり中核派という事をもって、全てが打ち消されようとしているのは恐ろしい事です。
事実として何が起きたのか、それを知ろうとし、客観的に事態を判断していく事、これは思想信条を超えたテーマです。
故に右や左といった立場に関係なく、人としての権利(少なくとも現在の日本国の憲法、法律)が蹂躙された事は本来もっと大きく取り上げられる性質の問題です。

逮捕された織田氏、どう見ても好青年です。男前ですしね。
紳士的なのかもしれません。
見た目だけで判断できないけど、内面が外見に作用する事は大いにあると思います。そういう意味では彼は信頼できる人物かもしれません。

でも組織となった時、それが本当の彼らなのかとも問いたい。
中核の根底にあるのは暴力ではありませんか?
国家や権力の暴力に対峙する為と彼らは言うのかもしれないけれど、
彼等の意見に反対するものは一方的なレッテルを貼って、凄惨な暴力を振るってきましたよね。
少なくとも彼らが今、暴力を平然と持出す運動を展開する気がないのであれば、過去の反省を明確に表明しなければ全く信用が得られないのではないでしょうか。
過去に拘泥するあまり現在に進展が得られないのも問題ですが、現在を見過ぎて過去を蔑ろにするのもあまりにもいいかげんです。

私もかつての仲間が理不尽にも彼らから、言われ無き暴力を受けた事を私は決して忘れません。

故に彼等のいいかげんな態度が、逆に権力に利用されてるとも言えませんでしょうか。
”中核?あ~じゃあ仕方ねえな”そう思われても仕方ない事を彼らも自覚しないと。
by tamaji (2008-08-28 11:25) 

yamamoto

もちろん中核派の正確な評価とその批判は(他のどのような集団に対するのと同様)必要です.しかし,憲法が保障する普遍的権利を守ることが「必要」だ,という時の「必要」とは意味が全く違います.後者は「絶対的に必要」なのです.
この件では記事を繰り返し書いていますので,参考にしていただければ有り難いです.コメントありがとうございました.

ブログ記事「ニーメラーの詩」の書き出しは「共産主義者」でなくてもいい」
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2008-07-20

同タイトルのウェブ記事
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/university05/hosei-univ.html


by yamamoto (2008-08-28 12:29) 

tamaji

足跡だけといいながらブログ全般興味深く拝見させて頂きました。
管理人さんの冷静な対応にも非常に好感が持てました。
私ごときの稚拙な書込みに、早速丁寧な返信ありがとうございます。

おっしゃる通り、法政の運動が絶対的に必要であり、侵されてはならないものを取り返す運動であるということは理解できます。

整理すれば中核への評価というのはまた別の問題であるのかもしれません。それ以上に事態は急速に動いている様ですし。
要は自分でも分ってはいるのですが、自分自身が彼等をどうしても許せないということ。
船が沈みそうで”とりあえず一緒にやらないと俺たちの船沈んじゃうよ!水掻き出そうぜ!!”という時に普通相手がどうとか言ってられないんですが、それでもお前とは一緒にやるかよ的な気持ちがあるんですね。
更にそれが、自分の家族を暴力をもってひどい目にあわせた奴ならなおさらです。
う~ん人間ですからね、理性だけで割り切るのはなかなか難しいですね。
それでも一方的に彼らを排除せずに共に闘っていこうという方がいらっしゃるのは何とも頭が下がります。

確かに私怨(って程凄くないですよ、自分は)的なものがあると究極的にはそれは例の内ゲバに繋がる訳で、それはそれで結局権力やらにいいように利用されてしまう訳ですね(今回の中核レッテルのように)。

年寄りでどうも長文になるのでもう止めときます。
別問題ではありますが、中核の皆さんも少しは己をどこかで振り返って欲しいなと思います。
なんだかいつも俺たち正論的な論調って逆に”大本営発表”のようだし”今迄ごめん、こんな間違いしちゃったかも”の方が好感もてるけど。
”正しかったけど、殴ったのは本当に悪かった”とか。
だって食品の賞味期限偽装だって隠すより、今や積極的におおっぴらにしたほうが評価高いわけですから。
管理者様駄文本当に失礼しました。



by tamaji (2008-08-28 16:56) 

yamamoto

ご自身の経験を紹介いただきありがとうございます.私はと言えば,(中核派ではありませんが)角棒で殴られて数秒間気を失ったという程度なので,それ以上の傷を負われた方の気持ちは,単に想像することしかできません.しかし,紛争地では,互いに殺し合いをしていたグループどうしでさえ,和解のテーブルに付かせるというプロセスが欠かせず,実際に行われているわけです.
ですから,憲法九条の,そして非暴力の精神を広げようとする立場に立とうとする人には,同時に自ら進んでその例を示すことも課されるのではないでしょうか.
by yamamoto (2008-08-28 22:06) 

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