劣化ウランの放射能についてひとこと [反核・平和]
昨日の転載で紹介しました,劣化ウランについてのCS放送を見ました.地上波でもぜひ取り上げて欲しいですね.応援のクリック歓迎 (1日1回まで) →
劣化ウランはアルファ線を出す放射性物質で,そのアルファ線とはこんな感じです.下の横棒から上に2本ほど立っている白い太い線がそれ. 元の大きな写真は,コピー先の霧箱製造会社,TEL-Atomic Incorporatedのページにあります.写真の下のアドレスです. |
http://www.telatomic.com/cloudchamber_alpha.html |
それにたいして,ベータ線(電子)はこんな感じ. (この写真は,ほんとはガンマ線が叩き出した電子なのですが,ベータ線も高速の電子なので同じ事です.) |
http://www.telatomic.com/cloudchamber_compton.html |
もし大学でアルファ線を出す放射性物質が少しでも紛失したりしたらそれこそ大問題になり,責任者は場合によってはクビになるかも知れません.そのような類の放射能が,第一次湾岸戦争では300トン以上も*イラクの地にばらまかれたのです.
イラクでの放射線の影響と思われる疾患の統計データはいくつもあると思うので,それらを見せるともっと説得力のある番組になったと思われます.
__________
* 次の小出裕章氏の文書によると321トンで,4.6テラベクレル(125キュリー)の放射能になります.これはウランのみの値で,その崩壊先の核の放射能も加算しなければなりません(下の補足参照).
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/DU0509.pdf
→ 小出氏が所属する京都大学原子炉実験所・原子力安全研究グループのサイト
__________
補足
劣化ウランとは,天然ウランから,これに0.72%しか含まれないウラン235を抽出した残りである.このため,その成分はウラン235,234が少くなっている.抽出されたウラン235は原子炉の燃料や核兵器に使われる.
天然ウラン | 劣化ウラン(DU) | |||
|
|
1グラム当たりの放射能(ベクレル) |
|
1グラム当たりの放射能(ベクレル) |
|
99.27% 0.72% 0.0055% |
12,350 568 12,450 |
99.8% 0.2% 0.0008% |
12,410 158 1,810 |
|
100% |
25,370 |
100% |
14,380 |
1ベクレルとは平均毎秒1個の割合で原子核崩壊が起きる放射能.
注意:ウラン238が放射線を出すとトリウム234に,さらにプロトアクチニウム234に変わり,これらはそれぞれベータ線と,低いエネルギーのガンマ線を出す(半減期それぞれ24日と1.2分で,いわゆる放射平衡).このため全体ではウラン238の少なくとも3倍の放射能を持つことになる.さらにその崩壊先はウラン234でこれは半減期24万年.なおウラン235の半減期は7億年.
なお,戦場から回収された劣化ウラン弾の分析で,少量ながらプルトニウムが検出されたことから,核燃料再処理後の「廃棄物」が使用されているのではないかとの指摘もなされている.
応援のクリック歓迎 (1日1回まで) →追記:アルファ線の霧箱動画を追加します.(08年7月19日)
アルファ線の霧箱の動画を追加しました.
by yamamoto (2008-07-19 11:47)